AsianForum 123th "Performing language, culture and identities: disinvention and reconstitution of language and culture"
Tuesday,November 10,2009Categories: Past Asian Forum (2008-2012) , Past Asian Forum (2008-2012)
123th
Tuesday, November 10, 2009
14:00-15:00
Room 252, Diffendorfer Memorial Hall West Wing, ICU尾辻恵美 (Emi Otsuji)
Lecturer, Japanese Language Coordinator, Faculty of Arts and Social Sciences, University of Technology, Sydney
「パーフォマティブ論の観点による言語、文化、アイデンティティの再構築の試みと
言語教育への可能性」
(“Performing language, culture and identities:
disinvention and reconstitution of language and culture”)
バトラーのパーフォーマティビティ論 (Butler, 1997, 1999) においては、言語、エスニシティ、文化が規定性を持ってはじめから存在するのではなく、個人またはコレクティブレベルでのパーフォーマンスの蓄積によって構築されるものであると論じている。本研究はパーフォーマティビティ論にのっとり、言語、文化そのものを解体(disinvent)、再構成(reconstitute)することにより(Makoni & Pennycook, 2007)、その多義的、逆説的な構成過程を明らかにすることを目的とする。
本報告では、オーストラリアの職場における「日本人」と「オーストラリア人」の「雑談」を考察する。データ分析から、参加者のパーフォーマンスには多義的、逆説的なものが複雑に共存し、言語、文化構築過程では、流動性と固定性、多様性と単一性の両者が相互作用していることが明らかとなった。また、近年、言語、文化、国家、エスニシティが1対1の固定的な結びつきを持っているとする考えの妥当性に疑問を投げかける研究が増えているが (Heller, 2007; Luke, 2002; Pennycook, 2007)、パーフォーマティブ論の援用により、その結びつき自体が流動的であり、新たな関係を作り上げる可能性を秘めているということも、データ分析から考察できた。つまり、個人個人が言語、文化を「パーフォーム/実践する」ことが、文化、言語、エスニシティ、アイデンティティの形成過程を流動的・ハイブリッドなものにすると同時に、それらの関係をも創造的なものにするということをこの報告で提唱し、将来の言語教育への新しい可能性を示唆したい。
Lecture in Japanese