アジア文化研究所・公益財団法人 JFE21世紀財団 共催シンポジウム 「歴史の智恵をどう活かすか? 」
2017-11-06カテゴリ: News , シンポジウム(2013-2017) , シンポジウム(2017)
アジア文化研究所・公益財団法人 JFE21世紀財団 共催シンポジウム
歴史の智恵をどう活かすか? -21世紀の日本がアジアと共生をめざすための歴史研究--
Learning from the lessons history teaches us:
Historical Research on how 21st Century Japan can aim for co-existence with Asia.
日時:2017/12/9 (土) 13:00-18:30
場所:国際基督教大学本部棟206号室(定員100名)
https://www.icu.ac.jp/about/campus/index.html
交通アクセス: JR中央線武蔵境駅よりバス15分
https://www.icu.ac.jp/about/access/index.html
(より詳しいアクセス情報はこちら)
予約不要(入退場自由)/入場無料
本シンポジウムは、公益財団法人 JFE21世紀財団「アジア歴史研究助成」がめざすアジアの歴史、文化と社会に関する研究を手がかりに、21世紀の日本がいかにアジアと共生すべきかを考えるシンポジウムです。
JFE21世紀財団は、大手製鉄会社であるJFEスチール等の拠出により設立された公益財団法人で、10年間にわたってアジア研究者に助成を行ってきました。
日本の一企業財団が歴史を直視し、日本とアジアが共存・共栄するための研究を支援することは、国内外で高く評価されています。
この研究助成は本学名誉教授であった染谷臣道(文化人類学)が委員長を務め、菊池秀明(歴史学)が審査委員会のメンバーとして運営に参加してきました。
染谷委員長は2016年8月に急逝されましたが、ICUアジア文化研究所と連係を図りたいという希望をかねてから持っており、本シンポジウムの開催が実現しました。
プログラム
12:45 開場
13:00 開会・ 開会の挨拶
岡田伸一 (公益財団法人 JFE21世紀財団専務理事・JFEホールディングス(株)代表取締役副社長)
13:10-13:40
講演1 青山治世(亜細亜大学国際関係学部国際関係学科准教授)
「日系中国語新聞『順天時報』と近代東アジアにおけるナショナリズムの相剋」
要旨:中国ナショナリズムと日本の対中政策のはざまにあった日系中国語新聞『順天時報』の軌跡をたどることで、戦前期日中関係の変容過程を見つめ直し、ナショナリズムの応酬といった今日的な課題に答える視座をも提示する。
13:40-14:10
講演2 片山剛(大阪大学大学院文学研究科文化形態論専攻教授)
「1937年南京事件に先行する南京空襲(8~12月)の時空間復元」
要旨:1937年8~12月、日本の海軍航空隊等が南京空襲を行った。この空襲による建物の被害について、未利用の史料(南京不動産登記文書)を用いて復元する。そして、今後に進められるべき研究方法のモデルを提示する。
14:10-14:40
講演3 川口幸大(東北大学 大学院文学研究科人文科学専攻准教授)
「中国における家族の近現代史的展開」
要旨:強固な父系社会と言われてきた中国の家族であるが、社会主義政策や少子化等の変化を経験して、どのような現状にあるのか。女性も生家の墓参りに行く、族譜に女性の名が記される等、新しい状況に着目し、その変容と持続を考える。
14:40-15:10
講演4 杉山清彦(東京大学 大学院総合文化研究科地域文化研究専攻准教授)
「大清帝国の多民族統治と八旗制―広域支配の制度と構造」
要旨:近世近代のユーラシア東方に君臨した大清帝国(清朝)は、東北アジア出身のマンジュ(満洲)人が建てた帝国であった。その拡大・運営の担い手となった、マンジュ人の政治・軍事組織である八旗制に焦点を当てて、支配構造を考察する。
15:10-15:30 休憩
15:30-16:00
講演5 真崎克彦(甲南大学 マネジメント創造学部 マネジメント創造学科教授)
「ブータン王国の国民総幸福(GNH)の歴史的考察」
要旨:ブータンの国民総幸福(GNH)は、人間社会の持続可能性や幸福増進に資する取り組みとして世界的に知られるようになった。本報告では、その来歴を一国史観から離れてとらえ直すことで、GNHをめぐる現況と課題を明らかにしたい
16:00-16:30
講演6 真鍋祐子(東京大学大学院情報学環/東洋文化研究所教授)
「富山妙子の画家人生と作品世界―ポストコロニアリズムの視点から」
要旨:1921年生まれの画家・富山妙子は、33年に父の転勤に伴って満洲へ渡り、18歳までハルピンで過ごした。戦後、九州を拠点に炭鉱を描き、60年代は出稼ぎの炭鉱労働者を追って中南米に渡り、Narrative Artとしての第三世界の芸術と出会う。70年代以降、韓国の民主化運動に共鳴し、金芝河の詩や光州民主化抗争に寄せて制作された一連の作品は、キューバの版画、メキシコの壁画を用いた反ヨーロッパの抵抗運動に影響されてのものだが、一方で80年の光州民主化抗争を機に勃興した韓国民衆美術は、地下で流布した富山の作品と著作を介して、これら中南米諸国の芸術運動から大きな影響を受けたといわれている。このような軌跡は、「満洲」を原点とする富山が、その生涯をかけて「世界史を肉体化する過程」でもあったといえる。
日本の植民地支配と戦争責任をテーマとする富山作品で特筆すべき点はフェミニズムの思想であり、くわえて被害者たちが置かれた民族的、植民地的な抑圧状況への深慮である。しかし朝鮮人強制連行や慰安婦をテーマとするとき、「加害者である日本人が被害者を主体的に描くことはできない」ゆえに、富山は自分の絵にシャーマン(spirit medium)を導入することで被害者たちの封じられた記憶を表象する。70年代以降、富山は日韓連帯による韓国民主化運動に参与する一方で、日本では自主規制の壁に阻まれ、韓国では独裁政権下で非合法とされたその作品は、80年代以降、さまざまなジャンルの文化人、知識人との共同作業をへて、スライドというメディア(medium)に編集され、まずドイツとアメリカで受容された。その結果、よりグローバルな次元での「超国家的民主化運動」の一端を担うことになった。
本発表では、富山作品がシャーマンおよびメディアという二つの次元の「媒体」によって構成されてきた点を具体的に示しながら、そのことの意味をポストコロニアリズムの視点から読み解くことにしたい。
16:30-17:00
講演7 守川知子(東京大学大学院人文社会系研究科アジア史専攻准教授)
「近世西アジア社会における「異教徒」と宗教的社会変容」
要旨:17世紀の西アジアは、領域国家の形成に伴い、宗派対立が激化した時代である。本講演では、異教徒・異端・異宗派や、「新ムスリム(Jadid al-Islam)」と呼ばれた改宗者たちを通して、地域社会が宗教的排他性を備えていく過程を論じる
17:00-17:20 休憩
17:20-18:20 総合討論
「未来へ向けたアジアとの共生に歴史の智恵をどう活かすべきか?」
18:20-18:30 閉会のことば
梅村坦 (中央大学名誉教授、公益財団法人 JFE21世紀財団アジア歴史研究助成審査委員長)
18:30 閉会