酸・塩基の定義、pHの定義

 

●水のイオンに解離                                  

 

 水 H2Oという安定した分子として存在しているが、ごく一部分 H+OH-というイオンのかたちで存在している(図1)。

          
    図1  水モデル1                  図2 水モデル2
 
水がイオンに解離している反応を式で表すと、
           K
       H2O   H+  + OH-
 
  25℃では[H+]=[OH- ]=1x10-7 mol/l と解離している割合はごくわずかである。
すなわち、H2Oの濃度はほぼ一定とみなせるので、水の解離定数K  とすると、
    K・[H2O]も一定の温度では一定値を示す。 
Kw= K・[H2O]と書き、水のイオン積という。 Kw=1x10-14 mol/lとなる。
 
この水モデル1には一つ問題がある。H+は陽子そのもので、陽電荷が小さな核に集中したものであるので、水の中に安定に存在しているとは考え難いのだ。
   実際には、H+H2Oと結合し H3O+として存在していると考えられる。
すなわち、水モデル2(図2)の方が実際の姿を表していると考えられる。

そこで、水のイオン解離反応式は、次のように書き改められる。

 
       H2O +  H2O   H3O+  + OH-
 
 

●pHの定義: 

  水の中のH+(水素イオン濃度)を次のように定義する。

   pH=-log[H+]=-log[H3O+]

従って、水のpHは、
    -log[1x10-7]=7
例えば、0.1 および0.01mol/lのHClのpHは、それぞれ
     -log[0.1]=1, -log[0.01]=2
となる。
   すなわち、pHが1大きいということは水素イオン濃度が1/10であるという意味である。
pH > 7 の水溶液を酸性、pH < 7 の水溶液を塩基性という。
 


 

酸: HA + H2O   A-  +  H3O+           

 酸:水にH+を与える物質

  [別の解釈]   

              Kw
    H2O +  H2O   H3O+  + OH-   水は両性物質
   塩基   酸          Kw=[H3O+][OH- ]=1x10-14 mol/l              

    ここにHAを加えと、

   HA  + OH- + H3O+    H2O   +  A-  +  H3O+

   酸HAOH- にH+を与える;その反応した分だけH3O+が残り、濃度を増す。pHが小さくなる。


 

塩基: B + H2O    BH + +  OH-

  塩基水からH+を受け取る物質 

 

  [別の解釈]   

    H2O +  H2O   H3O+  + OH-   水は両性物質

   塩基   酸       Kw=[H3O+][OH- ]=1x10-14 mol/l 

   ここに塩基Bを加えると、

   B + OH- + H3O+   O H-  +  BH + + H2O

   塩基B H3O+からH+を受け取る;その反応した分だけOH- が残り、濃度を増す。pHが大きくなる。

        

*[別の解釈]では、酸、塩基の本質が水そのものにあるという根本理解に立つ。

水のイオン積 Kw=[H3O+][OH- ]=1x10-14 mol/lは、質量作用の法則から温度が一定でイオン濃度(厳密にはイオン強度)が大きくない時は水の中に酸や塩基が溶けていても一定である。そこで酸、塩基の一方の濃度が分かれば他方の濃度がすぐに求められる。

 


中和反応

  HA + B  -------->  A-  +  BH+

 例

  HCl + NaOH -------->  Na+ + Cl- + H-OH

  NaOHは水の中でNa+ とOH- に解離している。BをOH- と考える。

  中和によって生成する水のほかにできる物質を塩(salt)という。

 

【小用語辞典】

 

「アルカリ性とは?」:指につけるとヌルヌルし、灰汁(あく)様の不快感があり、リトマスを青くし、酸と反応して塩となる性質。代表物質:NaOH, KOH。

「塩基性とは?」:元々は水に溶けにくく(ヌルヌル感触を示さない)、酸と反応して塩をつくる性質に由来する。Fe(OH)2はアルカリ性を示さない。現代化学(ブレンステッドの酸塩基理論)では、塩基性の方が一般的に用いられる。

 

「質量作用の法則」または「化学平衡の法則」とは?

次のような可逆反応があるとする。

 

 aA + bB + ……   mM + nN + ……

 

この反応が平衡状態に達した時、温度が一定であればKは一定の値をしめす。これをを質量作用の法則という。

   Kを平衡定数という。

 

  K = [ M]m・[ N]n…… /[A]a ・[B]b……

  

 


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