一般教育科目 NS III「自然の化学的基礎」 2002

 

クラス・オリエンテーション

●目 的

    1.自然および人工的世界を化学的基礎から理解すること。 
    2.現代化学および化学技術の発展と問題点を認識する。 
    3.民主的社会において、将来、一市民として、化学・技術行政に関し、知的な判断力と適切な影響力を
      持ち、かつ、行使しうるように備えること。 

●内 容

 主題「水」――水と人間との共生―― 
      <- 水がなぜ“今”の問題 なのか?-> 

    1.「水」を中心とした化学の歴史:万物の根源を水と考えたターレス以来、水の本性を探り続けた人間
      の歴史は、そのまま化学(物質学)の歴史でもある。古代ギリシャから17世紀の自然科学方法論確立
      期を経て、近代化学の基礎が確立されるまでの人間のあくなき物質(水)探求史をたどる。 

    2.水の自然科学:水は簡単な構造でありながら極めて特異な性質をもち、それが日常見なれている現象
      にも反映されている。「仮説実験授業」方式によって水の特異性を科学的に理解する。 

    3.自然環境における水:植物・動物の生存に水がいかに深くかかわっているかを学び、さらに地球上の
      水の循環と自然環境との関係、人間の水利用とその結果起きている環境汚染の問題を考える。
 
    4.水の起源:水はどこから来たのか? この問は宇宙のはじまりと元素の起源をたずねることであり、
      また、水惑星・地球の特異性、生命発生の謎を解く鍵でもある。このような時と空間の限界に関わる
      問題をVTRを見ながら考える。 

 まとめとして、水なしでは一日たりとも存続不可能な地球生命の危機と人間の課題について考える。
 
 クラスの中でいくつかのレポート課題を出す。例えば、「水と人間」について扱っている新聞記事やTV番
  組、internet等から情報を収集し、人間の課題を考える。レポートの発表と討論の時間もつくる。 


「水を通して人間を考える」とは?

 私の理解:「一般教育とは人間学である。」

 化学を通して人間について考えるのがこのクラスの使命と考えている。
1. 水問題を通して21世紀の人間社会について考える。
   
2. 水という物質は何ものなのか(万物は何からできているのか)という人間の究極を知りたいという欲求を
  もった歴史をたどることによって自然を知るという人間の営み(自然科学)の成立と特徴について考える。
   
3. 水の科学的性質を知ることによって、自然のしくみの不思議さ、水を利用する人間生活との関係について
  考える。
   
4. 水(川、海、湖)が汚れている、水を安心して飲めないと言われているが、水の存在と深い関わりのある
  自然環境の実態を見ることによって、人間活動(生活、産業、農業)との関係を考え、その原因と対策を考える。
   
5. 水はどこから来たのか、なぜこの地球上には豊富に存在するのかを知ることによって、人間(生物)がなぜ
  この宇宙に、地球に存在するのかを考える。
   
6. 水の美しさ、心を安らかにす不思議な力がどこから来るのかを考え、人間の心情と水との関係について考える。


このクラスのモットー
 Key words of this course
 
● Scientific thinking
 
● Current issues
 
● Interactive class
 
● Sharing
 
● Open
 
●成績の付け方
・中間レポート(メデイア情報から水と人間の問題を考える)
・最終試験
・VTR(「たけしの万物創世記」、「クイズ百点満点」、ワトソン「水の惑星」他)についてのコメント
・ショートレポート「地球カレンダー」
・クラスへの積極的関与(Active participation)
・クラスについての意見
合計::100%
              
クラスの予定(詳細)

講義資料

参考書 
●参考書
○1. 高木貞恵『水を主題とする一般化学』化学同人 1973  435 Ta29m
○2. 米山正信『水―このふしぎなもの』化学のドレミファ第 7  黎明書房 1974 430.8 Y84k v.7
○3. プラット, R 『水=生命をはぐくむもの』紀伊国屋書店 1975  452 P717wJ
 ・ Platt, Rutherford Hayes "Water: the wonder of life"  Prentice-Hall  1971  452/P717w
 4. 『いのちの水』(読売科学選書)中西準子 , 読売新聞社  1990  519.1/N38i
○5. セーガン, C『Cosmos』朝日新聞社 1980  440 Sa15cJk
○6. 半谷高久『地球・水・思う』化学同人 1982  519 H307c
○7. 半谷高久編『水とつきあう』化学同人 1983  517 Mi97
○8. ワトソン, L『水の惑星』河出書房新社 1988  452 W483wJ
 ・ Watson, Lyall  "The water planet : a celebration of the wonder of water"  Crown Publishers 1988 452/W483W
 9. 富山和子『水の文化史』文芸春秋 1980  517 To59m
○10. 小倉紀雄『調べる・身近な水』講談社ブルーバックス 1987  080.1 B 696
11. 井上靖編『水』日本の名随筆33 作品社 1985   914.608 N77
12. 中村運『水の生物学』培風館 1992  452 N37m
○13. 宇井純『日本の水を考える』NHK人間大学日本放送出版協会 1994  519.1 U56n
14. 日本生態系協会編著『環境を守る最新知識』信山社 サイテック 1998  468/N772k
15. 岩波講座地球環境学(7) 『水循環と流域環境』高橋 裕編  岩波書店  1998  519.08/Iw95/v.7
16. 岩波講座地球環境学(4) 『水・物質循環系の変化』高橋裕 岩波書店 1999  519.08/Iw95/v.4
17. (平成12年版総説/各論)『環境白書』  環境庁 ぎょうせい 2000  519/Ko244/2000
18. Dojlido, Jan "Chemistry of water and water pollution" E. Horwood 1993  435/D83c
19. Goldberg, Eduard "Water management : performance and challenges in OECD countries" Organisation for Economic Co-operation and Development 1998  Em97/wat/ma/pe
20. Van der Leeden Frits "Water encyclopedia" Lewis Publishers 1990  452/V284W
 
●何冊かの本紹介
 
(1)半谷高久「地球,水,思う」化学同人(1982)
水汚染の問題を考える時の基本姿勢となるべき「水とのつきあい方」が自然(地球)科学の立場から説得力をもって語られている。
 
(2)梶谷善久「水は生きている」恒和出版(1981)
水の不思議さに魅せられた筆者(新聞記者)がその感動に押し出され,水について自ら調べたことをやさしく解説した本。
 
(3)富山和子「水の文化史」文藝春秋(1980)
川と川沿の人々が、生活の中で水をどのように利用して来たかという歴史と,水とのかかわりの中で築かれ来た文化について書かれた本(毎日出版文化賞を受賞している)。
 
(4)米山正信,化学のドレミファ第七・「水ーこのふしぎなもの」黎明書房(1979)
ありふれた物質に思える水が実は極めて特異な物質であることを中高生向きにやさしく書いた本。米山氏の本を読んで理科系に進んだ中高生が多いと聞いている。
 
(5)井上靖編「水」(日本の名随筆・33)作品社(1985)
著名な文学者による水に関する珠玉のエッセー集。人の心をひきつけてやまない水の;力;文学者の筆によって見事に証しされている。
 
(6)福岡県自治体問題研究会「水の博物誌」合同出版(1979)
1年近くの間,時には20時間に及ぶ断水を経験し,文字通り深刻な水不足を味わった福岡市の人々は,様々な知恵をしぼって生活を支えて来た。その間,都市の「水問題」について学び,自治体として具体的に取りくんで来た課題を総括的にまとめた本。
 
(7)ライアル・ワトソン「水の惑星」-地球と水の精霊たちへの讃歌-河出書房新社(1988)
「水」のもつ様々な姿(=地球と生命の不思議)を写した写真集であり,かつ心に響くスケールの大きな水についてのエッセー。その一部を引用すると,「水はわれわれ自身,いやあわれわれの人生そのものに染みわたっている。それほど満ち溢れていながら,水はまたひどく珍しい物質である。水と生命このふたつは切り離せない関係にあるらしい。われわれは水より生まれ,水によって活かされている。太古の海のにどこかで,生きた細胞が自分用の小さな水ためをもって誕生して以来,この関系は変わっていない。霊妙にして素晴しいもの,それは水」
 
 
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