水―東京を1日散策することによって行なう教育

041720 池田崇

 

I. Introduction

 

「水は無味、無臭、無色透明で、物理・科学的に特に注目すべき特徴もない。しかも、この地球上のどこにでもある最もありふれた物質だ。」と考えている高校生がいるとしよう。確かに、この発言・発想には間違いがある。しかし、大学生の私がこの高校生に、「高校生ならば、学校で理科などを通して水のことについて学んだであろう。君の考え方は間違っている。」と言えば、彼の水に対する理解や知識を増やし、改善したことになるであろうか。私はならないと思う。

では、彼の水に対する態度、理解、又は知識を同時に改善するには何が出来るであろうか。私は2つの解決策があると思う。

まず、一つめの解決策は、この高校生に国際基督教大学を受験して、入学後、吉野先生の「自然の科学的基礎」を取ることを薦めることだ。「自然の科学的基礎」は私にとって大変勉強になる授業であった。彼にとっても勉強になるであろう。

しかし、この解決策には問題がある。もしこの高校生が一年生であれば、最短距離で今から三年後に、彼の水に対しての理解を深めることが可能であろう。時間がかかり過ぎる。その上、私は彼に水のことは何も話してないことになる。

二つめの解決策は、もっと実用的である。私がこの高校生を連れて一日間

東京を散策することである。(無論、彼の親には許可をもらい、授業に差し支えないように休みを利用して行なう。また、凍った水の性質について教えたいと思うので、冬に行なう。)

無論、この散策の目的は、彼の水に対しての態度、理解、そして知識を深めることである。又、私はこの散策で高校生に、地域的、国際的、歴史的視点から水のことに関して学んで欲しいので、午前と午後で散策のテーマを分けたいと思う。

 

午前中の散策では地域的な視点から水について、二つのトピックを通して高校生に水について学んで欲しい。この二つのトピックは下記の通りである。

 

A. 水の異状性質と、その性質がどのように環境を影響しているか

B. 水に関する地域問題

 

これらのトピックについて学ぶ為には様々な場所に行く。散策の順序は下記の通りだ:

 

1. 池のある公園

2. スケートリンク

3. コンビニエンスストア

4. 玉川(東急田園都市線・大井町線二子玉川駅付近)

 

 

午後の散策では、水に関する国際的、歴史的な視点から学ぶ。これも、二つのトピックを通して高校生に学んで欲しい。この二つのトピックは下記の通りである:

 

A. 水に関する国際問題

B. 水と生命の誕生

 

これらのトピックを学ぶためには、青山の国連大学と上野の国立自然科学博物館に行く。

この散策においての交通手段は、電車や公共バスを使う。

 

II. 午前中の散策

 

1. 池のある公園:まず高校生に池を見てもらう。二月で、池の水は凍っている。     

しかし氷を通して池の底の方を見ると鯉がゆっくり泳いでいる。

 

高校生:なぜ0℃の水で魚が生きているの?

 

私:それは、水の異状な性質のお陰だよ。普通、固体は液体より密度が大きいよね?だから固体は普通液体に沈むよね?それに、普通の物質は温度が高くなればなるほど密度が小さくなることも知ってるよね?しかし、水の密度は0-4℃では逆の傾向があって、4℃で密度が最大になるんだ。氷は、0℃以下で出来るから、密度が低いんだ。だから氷は固体なのに水の上に浮いているんだよ。

高校生:それで、それと池の魚の生存とどんな関係があるの?

私:もし氷が沈んでいたら、その上の水は0℃になって鯉は死んじゃうよ。しかし、氷は浮いているため、その下の水の温度は0℃以上なんだ。だから鯉は生きているんだよ。

高校生:なるほど。氷の性質のおかげか。水もなかなかやるじゃん。それにしてもよく知ってるね。

私:いやいや、これは「自然の科学的基礎」のおかげだよ。

高校生:なにそれ?

私:僕の大学の授業名。

高校生:ふーん。その大学受験してみようかな?

私:うん、してみれば?

 

2.スケートリンク:高校生と私はスケート靴を借り、滑る。

 

高校生:うーん、午前中は空いているね。あんまり人が滑っていないから、氷がガラスのように綺麗だね。でも、ガラスの上では滑ることは出来ないよね?何故?

私:それも水の異常な性質のお陰だよ。氷は圧力をかけると融点が下がるんだ。

高校生:それで氷の上を滑ることが出来るの?

私:うん。普通の物質は逆なんだ。アイススケートで氷の上を滑ると、その人の体重分圧力がかかるでしょ?その時に、スケートの刃の下にある氷の融点は下がって氷が溶けるんだ。だからスケートは溶けた氷の上を滑ってることになるから、滑らかに滑ることが出来るんだよ。ガラスでは融点が上がって、逆に滑れなくなるよ。

高校生:おっと!(滑ってしりもちをつく)

私:それも氷の性質のせいだね。

 

3.コンビニエンスストア:高校生と私はミネラルウォーターを買う。又、氷に冷やされた、アイスクリームが店に運びこまれるのを見る。

 

高校生:一回この変な形をしてるEvianのボトルを買ってみたかったんだ。

私:Evianの水って、さっき公園の水飲み場で飲んだ水と味が違うでしょう?

高校生:うん。なんかフレンチアルプスの水の味がする…いや、それは無いけどカルキの匂いや味はしないね。

私:うん。これはね、東京で飲み水として安心して飲める水が周りに少ないからなんだ。昔あった井戸水の地下水も汚染されてるしね。だから東京の水道水は浄化装置を通り、化学製品を使うことによって始めて安全な水となるんだよね。

高校生:昔は飲めたんだ。

私:そうだね。昔はちゃんと雨水や、陸地にある水が蒸発して、それが雲になり雨・雪を降らして汚濁水を浄化する効果があったんだ。東京の道路は舗装されていて、道路の水は蒸発しないまま流れてしまうしね。

高校生:だからヒートアイランド現象も起こるんだね。自然の中の水はすごいね。

私:そう。自然の水の本来の太陽熱による灼熱を防ぐ効果を得られないんだ。それに、ゴルフ場からの除草剤が地下水にしみ込んでいるから地下水は飲めないね。

高校生:残念だなー。(運び込まれるアイスクリームを見ながら)それにしても、アイスクリームは運搬されてる間に溶けないねー。

私:そうだね。それも水の異状なせ異質のお陰だよ。

高校生:なんで?冷却装置がついたトラックのお陰でしょ?

私:まあ、そうなんだど氷自体の性質によって溶けにくいんだよ。氷ほどね、大きな融解熱を持っている物質は無いんだよ。だから氷は優れた冷却剤でもあるんだよね。

高校生:風邪を引いたら、良く氷を入れたビニール袋で頭を冷やすよね。良く長い間、溶けないなー、と思うよ。

私:まあ、空気中にある水蒸気のお陰でインフルエンザも年に何十回も引かなくてて済むんだよね。

高校生:そうかー。水には感謝しなければいけないんだなー。

 

4. 玉川:高校生と私は玉川沿いを歩く。他の川からの合流点で、いかにも薬品が溶け込んでいそうな水が玉川に流れ込んでいるのに気づく。また、川底に色々なごみに気づく。

 

高校生:汚いね。やっぱり釣りや水泳は出来ないね。でも、自然の水は浄化されるからいずれかは綺麗な水になるよね?

私:いや、あまりにも色々な物質が流入しているから自然浄化能力を越えて

いるかもね。

高校生:本当に?じゃあ、汚染されたまま海に流れて、既に汚染されている海と合流すると…

私:海は地球のごみ捨て場ではないし、それほどの処理能力はないから、海

も汚染されるね。海の生物はそれに影響されて、漁業にも打撃を与えるよね?

高校生:そうなると、魚の値段も上がるし、衛生上魚が食べられないかも。それに車とか工場も問題でしょ?

私:排気ガスで酸性雨が発生して大気を汚すから、池の魚が死んだり、森の木が枯れたり、彫刻物が傷つくよね。

高校生:汚染された水…恐るべし。

私:僕たちの周りの水が綺麗であることが大切であることが、僕たちの生活に大切であることが分かるでしょう?

 

III. 昼食にて

 

高校生:水の異状な性質につき少々学ぶことが出来たよ。でも僕には何が出来るだろう?

私:そうだね。まず最初に、川水や海水を汚染する行為はしないことだね。

高校生:例えば?

私:油を直接流しに捨てないことや、川や海にごみを捨てないこと。海水浴にいったらごみを置いていかないこととかね。それに水は無駄遣いしてはいけないよ。

高校生:長風呂は駄目かー。

私:うん。生活の周りでは色々な節約の仕方があるよね。風呂の変わりにシャワーを使ったり、トイレに節水型の器具を設置を出来るしね。洗濯物や皿洗いも一杯になるまで洗わないように努力できるし、洗車の時も水の量に気をつけることも可能かな。捨てた缶や、プラスチック、車も水を使用しているから、それらの使用量も減らすことが大切だね。

高校生:ワぉー。すごい一杯できることがあるね!電車に乗って東京を散策することも節約してることになるかな?

私:公共の交通手段をとることはよいことだよ。

高校生:水をなめてはいけなかったんだ。

私:NHKの教育テレビの小学生のような発言を今ごろしているね。でも、少しは理解してくれたから、それはそれでいいね。では、行こうか?

高校生:そのプラスチックボトルリサイクルするよね?

私:…もちろん。

 

IV. 午後の散策

 

1. 国連大学:世界の水の使用量の資料を調べる。又、国際的な紛争や、国際関係においての様々な問題についての資料に目を通す。

 

高校生:日本は2千9百億リットルの水を毎日消費しているんだね。想像がつかないや。

私:でもアメリカは1兆リットル以上の水を毎日消費しているんだよ。でも確

かに日本の消費量は先進国17カ国の中では国単位の消費量では二位だね。

高校生:あまりいばれる数ではないね。

私:確かに、水の少ない地域の人たちは本当に水を無駄遣いしないよ。それだけで紛争が起こっているんだから。

高校生:たとえば?

私:果物でイスラエルのスウィーティー、って食べたことある?

高校生:うん。おいしいよね。でも、イスラエルってあまり水には恵まれてないよね?

私:その通り。少ない水を素晴らしい農作技術で作物を栽培しているんだよ。

でもそれだけでは足りないので、パレスチナの近くにある川から水を引い

ているんだよ。

高校生:ただでも争っているのに…

私:うん。中東和平の夢をかなえるためには、絶対に水の問題を解決しなければいけないんだ。

高校生:そんなに大切なの?

私:そうだね。それにカザフスタンやキルギスの農作物収穫率の激減、アフリカの干ばつは乏しい水の管理が原因で色々な問題が起こっているね。元ソビエト連邦の国は共産主義の時代、中央政府の管理がしっかりとしていたんだ。その管理のおかげでダムがきちんと農場に水を配給していたけど、もうそのようなことはないから穀物を輸入せざるおえないんだ。ジンバブエや北朝鮮の干ばつもダムを建設するために国税を使用すればないと思うんだけど。

高校生:国連の資料にもそう書いてあるね。

私:つまり国連が与える援助は水に関する様々な問題を解決することによって、他の問題も解決出来るんだ。ダムや水道水の浄化装置を作ることによって、飢餓や病気が広がるのを防げるよね。トイレの建設も大切だよ。それにH.I.V.の薬を投与するときには清潔な水が必要なのが最低条件なんだよ。水なしにエイズ問題は解決できないよ。

高校生:そんなに水が国際問題に関わっていたとは知らなかったよ。もしかしてアフガニスタンでも?

私:アフガニスタンも水問題が深刻なんだよ。タリバン政権の間食物が少なくなって、木を燃料として使う人が増えたため、森が減ったり、消えたりしたんだよ。森がどれだけ自然の水の循環に大切かは知ってるよね?

高校生:うん。頭が痛いよ。

私:本当にそう思うよ。

 

2.国立自然科学博物館

 

高校生:それにしても地球の誕生の展示は面白いね。宇宙にちらばっていたチリによって地球が生まれたなんて。

私:ビッグバンによって水素原子と酸素原子が発生して、地球が太陽から都合

のよい距離にいたから水が三つの状態:水蒸気、固体、気体であることを

可能にしたんだよね。地球の大きさも丁度都合がいいし。それで海が出来たんだよね。それに海のお陰で地球の大気温の変化が少ないし。海が無ければ生物は無かったよ。

高校生:(生物の展示を見て)それにしても人間が魚から進化したなんて…

私:そうだね。激しい雷雨、放電や紫外線によって有機化合物が発生して、それが海に溶けたお陰で生物が発生したんだよね。

高校生:気が遠くなるほど長い時間をかけてか…

 

V. 夕食にて

 

私:水が人間の存在自体に関係していることが分かった?

高校生:水をなめていた僕は、自分の存在の訳について考えていなかったことと同じ?

私:うーん、そこまで自分を責めなくてもいいけど、水って大切でしょう?

高校生:そうだね。つまり多くの発展途上国においての問題は水と大変深い関わり合いがあることがよく分かったよ。ダムや水の浄化装置、下水道の建設がどれだけ他の問題の解決につながるかがよく分かったよ。将来、国際機関やNGOで働くのであれば、そのことについて忘れないよ。それに博物館で生物の進化の元には海の存在が不可欠であったこともね。

私:君の前の発言は撤回する?

高校生:うん。水は無色かもしれないけど、物理・科学的にもかなり特徴があることが午前中によく分かったし、午前・午後にどれだけ地域や世界で水に関する問題があることが少々分かった気がする。それにその問題に関してどのように対処して、自分がどのようなことをしなければいけないかが分かってきた。

私:1日でこれだけ分かってくれればよかった。

高校生:ありがとう。国際基督教大学ではこれだけ水のことに関して学べるんだね!

私:いつかバカ山で会うことを期待してるよ。では、

 

、. Conclusion

 

このように、東京の様々な場所を一日間散策することによって水のことについて学ぶことが可能なことがわかる。確かに上記の私と高校生の会話と結末は理想的である上、私が高校生の平均知識レベルをなめているように見える。しかし、電車でこれらの場所を全て回ることは充分可能であり、大変現実味のある解決策であることが分かると思う。私もこのエッセイを書くことによって水と東京の深い関係も考えることが出来たと思う。もし、水が無意味である、というような恐ろしい発言をする高校生がいるのであれば、是非この東京散策を行なってもらいたい。

 


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