水辺の変化〜蛍を通して〜

 

 

 水という物質は、地球上に1,384,518000000000000立方メートルも存在し、その総量は変わらない。確かに、この地球上最もありふれている物質と言えるかもしれない。しかし、果たしてそうだろうか?水と言う物質は地球上に様々な形で存在している。固体(氷や氷河)として、気体(水蒸気、雲)として、そして液体(水、海水、淡水、生体内の水分)といった様々な形で存在している。そして、私たち人類の生活に最も密着している、関係のある水の形態としては、液体の水ではないだろうか?私たちは毎日水を飲まなければ生きていけない(人間の身体の60%は水分である)。特に日本人には、国土に河川が豊富と言ったことで、淡水(川)出水に接することが多いと思われる。そして、川は不変なものではなく常に変わってきている。更にその川の周りの環境(水辺)も川の変化と動揺激しく変化している。

 

そこで、その変化の一例として蛍を取り巻く水辺の環境の変化を述べていきたい。

 

1.蛍とは?

  一口に蛍(ホタル)と言っても世界には2,000種ものホタルがいて、中には胸が光るホタルや4cm近くある巨大なホタルもいるという。日本に生息するホタルとしては現在46種が確認されている。日本のホタルの多くは昼行性(昼間に活動する性質)で、昼間にいくら光っても無意味なので発光器が小さくなったか、または消滅したと考えられる。ホタルの交信は光によって行われるが、昼行性の場合は匂い(フェロモン)によって行われている場合が多い。そして、私たちが一般にホタルと聞いてイメージするようなものは、ゲンジボタルやヘイケボタル、ヒメボタルである。これらが私たちに身近なのは、生息域が人里に近いことやなによりも発光が強いためだと思われる。中でもゲンジボタルは、日本全国に生息している(私は一度も見たことが無いが)。生息域は人里近いきれいな水辺である。

 

2.ホタルのいる水辺

  ホタル(ここで言うのはヒメボタルやゲンジボタル、ヘイケボタル)が生息するには、きれいな水が必要で、餌となる巻き貝(カワニナ)などが生息し、産卵に必要な水草や水辺にコケ・草などが育つ土壌も必要である。健康的な水と土、空気がホタルの生育には重要な鍵となる。魚のフンなどから発生するバクテリアには水を自然濾過する力があり、同様に土や空気の浄化にもバクテリアが必要です。つまり、魚や巻貝が生息できるような自然に近い水辺が必要と言うことである。

 

3.水辺の変化

  上記のような水辺が戦前では日本各地いたるところにあり、ホタルが夏の風物詩としてみることが出来た。しかし、戦後の経済発展を通して、ホタルの住むことの出来る水辺は減り、ホタルの数も減少していった。その理由としては、自然の浄化機能を上回る量の廃水(工業、生活)や合成洗剤の川への流入といった直接的な川の汚染がある。森林伐採による山土の流入もある。また、都市計画・治水事業などによる土手のコンクリート化はホタルの生息に必要である、水辺に草・コケを育たなくさせ、土を呼吸できなくした。このように、日本の経済発展に伴う環境に配慮をしなかった行動で、川や川辺を汚して行きホタルの数、見られる所が減少していった。

 

4.ホタルの保護

  新潟県長岡のゲンジボタル及びその発生地は国の特別天然記念物に指定されている。これはホタルとその生息地を保護するにあたってとても良いことである。しかし逆にいえば、ホタルが天然記念物に指定されるほど希少なものになってしまったと言うことである。そこで、今ホタルが生息している場所を保護し、更に生息場所を増やすにはどうしたらよいのだろうか?その為には、コンクリート一辺倒の河川工事ではなく、多自然型川づくりや住民参加型川づくりにシフトし、川辺(土手)を生物にとって住みよいものにするべきだと思う。多自然型川づくりとは自然の景観と動植物共生を加味した工法である。例えば、土砂のたまりやすい素材を使い水溜りが出来やすくし、自然に近い状態にしようとする。住民参加型川づくりとは、河川付近の住民が河川工事に意見や要望をのべていき、河畔林の保護の要望や、生物移動を実施したりする川づくりである。もちろん、ホタルの保護の為には川の水を汚さないと言うのがある。この為には、一刻も早い下水道の100%の普及が必要だ。水質汚染の原因は80%近くが家庭からの生活廃水が原因だと言う。廃水をなるべく出さないようにする個人の努力も必要だが。

 

以上のように水辺の変化をホタルを通してみてきた。水を通して世界を見るだけで、人間の経済活動により多くの生物の数が減少していることが分かる。また、日本の開発計画のずさんさや、経済の問題も見えてくる。水のことをほんの少し考えただけでそれだけの事まで思考が及ぶ。これは世界中にあるだけに、人間・生物にとって水がどれだけ重要なものであるかを意味すると思う。また、人間の意に反して生物が減少してしまっていることからしても、水は人間にはとても及ばない偉大なものであると思う。まだ、水はありふれていてつまらない物質と言えるだろうか?

 

<参考資料>

・「多自然型川づくり」 株式会社サンブレス http://www.sunbless.co.jp/product/tasizen.html

・「住民参加型の河川工事」 株式会社日本ソフト http://www.japansoft.co.jp/civil/kasenkoji.html

・「セブンイレブン緑の基金」 http://www.7midori.org/10/10_2.html

・「ホタル保護の歴史」 長野県辰野町 http://hotaru.online.ne.jp/tatsuno-nagano/root/hotaru97.014.html

 


▲レポート一覧に戻る

▲元(講義資料)へ戻る