〜ありふれてはいない驚異的な物質。水。〜 

 

 

Introduction

 水道をひねってごらん。何が出てくる?水が出てくるね。最近はまずくなったというけれど、飲める水が出てくるね。カルキ臭のように、人工的に付いた匂い等を別にすれば無色透明・無味無臭だ。飲んだとたん、病気になったり、または濁りきった茶褐色の水が普段出てくることはない。水は蛇口をひねれば出てくる。それは驚きかい?そんなことで驚くのは馬鹿らしいと思うかな。いや、それともそんなことは想像すらもしたことはないかもね。水道は水が出る。それが当たり前だと思っているのは、ある意味幸せなことであるね。けれども、少し視線をずらしてみれば、本当に君の持っている水に対しての感じ方や知識が、実に現代の日本で育った人々の特徴的なそれだということに気づくはずだよ。

 

化学的な視点から見た水の性質

  水は化学的に見て非常に特異な物質と見られているんだよ。確かに、日常のなかでは水は黄金なんかより、経済価値としてはずっと安いし、プルトニウムのような放射性物質でもなく、存在しているだけで危険というわけではないよね。けれどもそれは、日常生活の視点から見たレベル。まず、水と氷を比べてごらん。映画『タイタニック』で船は氷山にぶつかって沈没してしまうね。そう、氷は水に浮いている。これこそ、特異な水の第一の性質。他の物質のほとんどは固体は液体よりも比重が重い。氷は逆だね。水が液体から固体になるとき、分子構造が液体分子構造よりも隙間の多い分子構造へ変形していくことで起こることなんだ。さらに、第二の性質として、水は何でも溶かし込んでしまう性質を持つ。その水は純水に近くなればなるほど、その他の物質を溶かそうとする力は大きくなり、純水を作るのは非常に難しい技術が必要となる。今、私たちの生活にとって必需品となりつつあるPCの部品は非常に多くの精密な部品が組み込まれているね。それらは、少しの塵・余計な汚れが使えないものへとしてしまう。その汚れを洗い落としているのが水-「純水」なんだよ。第三の特異な性質。通常、物質は温度が低くなればなるほど密度が高くなり重くなっていく。しかし、水というものは4℃で、その密度が最大になるんだよ。この性質がなければ生物は死滅するとまで言われているんだよ。なぜか。例えば、湖のほとり。湖の水は常に対流を繰り返している。この対流のおかげで、奥深く潜んでいる生物は熱を受け取り湖の中の水が循環され、表面にいる藻類の光合成による酸素を含んだ水が届くようになる。これも、4℃で一番重くなる水のおかげ。0℃が一番重ければ、深く光の届かない湖底に沈んだ冷たい水は永劫暖められることなく環境の循環が行われなくなり、ひどく悪質な環境となってしまう。化学の視点からは、他にもまだまだいろいろな水の特別な性質があるんだ。では、今度は化学的視点ではない別の角度から見た水の色々と大切な働きについて考えていこう。

 

生活の視点から見た水

  冬も終わりが近づいてきたね。春が待ち遠しいけど、三月は結構、雪が降る時期。東京は雪が降ると大変困ってしまうよね。東北・北陸地方などは除雪が大変で、屋根に詰まった雪をほうっておくと家がつぶれてしまうほど深刻なんだ。まぁ、もともと日本は降雪量が世界的に見ても大変多く、シベリア・アラスカと比べてみても降雪量は上回っている。それだけに雪害も深刻だ。日本は台風もよく上陸するね。集中豪雨・堤防の決壊は深刻な被害をもたらす。でも、ここで気づいてほしい。実は洪水は疲弊した土地の塩など、植物にとって有毒な物質を洗い流し、豊かな土を新たにその土地に与え、生き返らせる働きをする。水稲が陸稲よりも長年持続しやすいのはこのことに因るものなんだ。日常の生活の中でも水がなくてはならない役割を担っている。人間のおよそ60%は水からなっている。体内の栄養・酸素などを伝達するのに必須だ。食物をとらなくても人間は10日間ぐらいは生延びられると言われているけれど、水断ちをしたら、それこそ2〜3日で死んでしまうよ。

  こんな大切な水なのに、日本人は水に対しての意識が非常に弱い。日本人はいやなことは、よく「水に流す」と言うね。世界のことを考えたとき、水をつまらない物質だとは決して言えなくなってしまうよ。面白い実験があるんだけど、色々な国々の子供に水の絵を描かせてみたら、日本人は水を水色(青色)で描くんだけど、他の国々の子供は褐色の色にする子供が多かったんだ。これは、普段どのような水環境下で暮らしをしているかを如実に示しているね。日本人が水に褐色の色を連想させるのは少し思いつかないのではないかな。世界の水事情に目を向けてみよう。

  日本のすぐ隣の国、中国の水事情には色々な問題が取り残されているんだ。たとえば、新しい水の用水路を開発するにしても、ダムを作るにしてもだ。前者は、新しい水を引く時、工業地帯を通ったり、傾斜の上がり下がりが激しい土地では、産業廃水が混入したり、水が潤滑に届くように配慮しなければならない。後者は、国際河川なんかにダムを作ると、下流の地域が充分な水の供給を得られないかもしれないから、中国一国家の問題だけではなくなってしまう。また、ダムを作ることは水の流れを止めてしまう事だよね。すると、下流の水位を下げてしまう。中国の美しい河川の歴史的遺産が大きく価値を損なってしまうかもしれない。水一つの問題が、あらゆる様々な問題と密接に繋がっている。水が争いを引き起こす可能性もある。そして水は、ビジネスとしても今、大きな注目を集めている。

エビアンとかボルビックは有名なミネラル・ウォーターのブランドだね。今、カナダの湖の水を輸出して利益を得ようという動きもある。水は他の商品と同じように売り買いしても何ら変わりは無い。たしかに、それは部分的には正しいのかもしれない。昔のヨーロッパは水の質が悪かった。水には硬水・軟水と種類がある。水分中の溶解物質でそれは決められている。日本の水は軟水だといわれている。そのまま飲んでもおいしいし、その水で野菜なども煮炊きできる。当たり前のことという感じもするけど、ヨーロッパではそうはいかない。まず、汚れて飲めない。しかも野菜など茹でてしまおうものなら、ヨーロッパの水の多くを占める硬水によって、ガリガリ・ザラザラとなって全くおいしいものではないよ。だから、あそこの地域はワイン・ビールなどを水の代用として飲む習慣があった。少し長くなったけど、水は以上のように商品になりうる理由にふさわしい。けれど、それはヨーロッパでは水に変わりうる代替水をヨーロッパ人自らが作り出せたからのこと。問題なのは今、水を商品として売り出そうとしている対象地域は代替水すらも無い、絶対的に水が無い人々へのものだ。そのような人々に、水を商品として与えるのは好ましくない。お金の無い人は水を手にする事が難しくなる。水が得られないというのはつまりは命の危険を意味する。水は人が手にする事の出来る最低限の基本的人権なのではないかな。その最低限の基本的人権は与えられる程度が人によって、その人の持つ富の差によって違ってきてはいけないと感じるな。各々の人々が公平に分配されるべきなのではないのかな。

色々な水に関しての問題が浮かび上がってきたけれど、それでは、日本は現在に到るまで水問題に皆無であったかというと、そうでもない。信玄堤は知ってるかい。名前が示すとおり、武田信玄が作らせたものだ。当時は水は甲州の国では最重要で急を要する政策だった。洪水・氾濫がしきりに起こり早急に解決する必要があった。水は大事な問題だったんだね。また、信玄堤には新村の開拓・農作物に対しての灌漑設備整備の目的も含まれていたんだよ。利根川も同じことが言えるね。昔は東京湾に注ぎ込んでいた利根川の河口を大きく太平洋へと変更した。行ったのは時の徳川家康。これによって、湿地帯であった価値の低い関東平野は徳川江戸幕府300年の磐石となったんだ。世界四大文明が河川の近くから発生したことからみても、人間の歴史は水とともにあったといってもいい。水ありえずに人間の今の文明はありえなかったんだよ。

以上のように水に対して様々な視点から見つめていったね。その水が今危険だ。21世紀は水をかけた争いが大きな問題であるともいわれる。日本も水の使用量が増えており、浄水の問題が焦点になっている。私たちはこのような問題に対して何ができるであろうか。

 

水の未来への提言

  まず一つに、水に対しての目的意識を高めることが肝要だ。食事に出される味噌汁(200cc)をそのまま下水溝に流せば、その汚れた水を魚が住める状態にまで浄化するのに風呂桶4.8杯分あたりの水量が必要だよ。てんぷら油(500cc)になると330杯分もの風呂桶が必要だ。つまり、些細な心無い私たちの行為がどれだけ地球環境に被害を与えるか気が付くはずだ。そんな廃棄物は流さない。食べ残し・飲み残しは、嫌なものだからって「水に流す」と消えて無くなることはない。いずれ、どこかで回りめぐって私たち自身に返ってくる。自分たちが困る。これを考えてごらん。少しは身近に感じてこないか。現在、日本の汚水処置はその膨大な量のために高速濾過処理の方法を取っている。これは、従来の濾過処理方法と比べて、早く・大量というメリットがあるけど、カルキ臭が付着しやすく、不味い水になる。おいしい水を取り戻すためにも節水意識をもつことは最低限かつ最も簡単に私たちができることだよね。このような意識を一人一人が持ってくれば、大きな視点から変えようという動きがさらに盛んになってくると思うよ。それは、政治からかもしれないし、NGOの単位からかもしれない。普段、私たちの生活の周りには水を有効利用した工夫が多く見ることができる。東京ドーム・新国技館の屋根上の降水は集積されて飲み水以外の水に再利用されている。「エコ・アイス」は水を効率よく使った環境に負荷をかけない。雪発電の技術開発も行われている。雪が溶けていく過程の中での、雪と水の温度差を利用しての新しい発電方式だ。雪をそのまま、保存して渇水時期の防御策としての雪ダムも考えられている。

 身の回りの水にもっと目を向けてごらん。水は政治・経済・文化などを大きく揺り動かしてきたものであり、今後もありつづける。そして、さらに新しい問題をも生み出しているのが、たかが水と君が思っている「水」なんだよ。

 


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