教授 吉野輝雄


最近の研究活動

  1. オリゴ糖およびスフィンゴ糖脂質の化学合成
    動物細胞表面上に存在する糖脂質や糖タンパク質糖鎖が,細胞間の相互認識や免 疫機能,細胞分化の制御に関与していることが明らかとなりつつあり,それらの 分子機構の解明が研究課題となっている.この研究分野は「糖鎖科学 (Glycoscience)」や「糖鎖工学(Glycotechnology)」という新しい名で呼ばれ,医学, 生物学,化学を含む学際的な研究が展開中である.私は有機化学の立場からこれ らの研究に寄与したいと考えている.

    研究課題:

    1. スフィンゴ糖脂質を構成するオリゴ糖鎖の化学合成.
      現在2種のオリゴ糖鎖の合成を研究している.1つ目はグロボ系糖脂質を構成す るオリゴ糖鎖(SSEA-3,Forssman,ParaForssman抗原糖脂質の構成三糖)の化学 合成.われわれの研究室で開発したグリコシル化反応を適用し,SSEA-3抗原糖脂 質の構成三糖の合成は完了している.現在,残り2つの三糖の合成を研究中であ る.2つ目は,細胞接着やガン特異抗原としての機能を担っているルイス−X, −Y(Lex,Ley)抗原糖鎖の新しい簡便な合成法の開発である.

    2. 化学変換法によるスフィンゴ糖脂質の合成.
      グロボシド(ヒト赤血球膜中の主要糖脂質),ヘマトシド(ウマ赤血球膜中の主 要糖脂質)という比較的単離の容易な糖脂質から出発して化学変換および糖鎖延 長反応を行ない,種々の糖鎖構造をもつスフィンゴ糖脂質を合成する.具体的に は,グロボシドからはSSEA-3抗原やForssman抗原糖脂質を,また,ヘマトシド からはアミノCTH,パラグロボシドといったラクト系列糖脂質の化学合成を研 究中である.今後,ABO,Ii-血液型抗原やガン特異抗原(Lex,Ley)などのスフィン ゴ糖脂質および,それらの類縁体の化学合成へと発展させていく計画である.

  2. パソコンを利用する糖質のNMR データ処理
    昨年発表した糖質研究者用のパーソナル1H-NMRデータベースのオリゴ糖鎖構造 の決定への利用法と13C-NMRデータベースへの拡張を研究する.

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研究論文

  1. Yoshino, Teruo and Richard R. Schmidt: Chemical synthesis of CMP-N-glycolylneuraminic acid, Carbohydrate Lett., 1, 329-334 (1995).
    N-グリコリルノイラミン酸を転移するための糖ヌクレオチドであるCMP- Neu5Gc(シチジンモノホスホ N-グリコリルノイラミン酸)を,N-アセチルノイラ ミン酸から出発し総工程12段階で化学合成した.

  2. 吉野 輝雄:糖質研究者用・糖質 1H-NMRデ−タベース,J. Chem. Software, 2, 196-205 (1995).
    糖質1H-NMRデータを測定条件,文献とともに保存管理するだけでなく,糖鎖の 構造決定に利用できるようにNMRデータと化学構造式を組み合わせたカード型表 示,統計処理結果の表示をする実用的な糖質研究者用デ−タベース作成した.

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研究発表

  1. 吉野輝雄,石戸良治:N-アセチルラクトサミンと2, 2−ジメトキシプロパンの反応に よるH,LeX, ,LeY抗原オリゴ糖合成中間体の合成,第17回糖質シンポジウム(京都),1995年7月18-20日.

  2. 吉野輝雄:糖質研究者用1H-NMRデ−タベースの作成と利用法,化学ソフトウエア学会'95研究討論会(福井),1995年10月21-22日.

  3. 吉村典子,吉野輝雄:化学変換法によるアミノCTHスフィンゴ糖脂質の合成,第1 回糖質若手フォーラム(東京),1996年3月11-12日.

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著書・その他の出版物

  1. 吉野輝雄:化学ソフトウエア学会の行方,化学とソフトウエア,17, 125-126 (1995).

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学術団体における委員・役職

  1. 化学ソフトウエア学会理事,1994年−現在

  2. 化学ソフトウエア学会編集委員,1996年−現在


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理学研究科報告1995目次へ