教授 佐野瑞香


最近の研究活動

  1. 有機電導体・半導体の研究
    フッ素で架橋したアルミニウム・フタロシアニンおよびガリウム・フタロシアニ ンは1次元にフタロシアニン分子が重なった結晶構造をしているが,その電気伝 導性,光伝導性の測定から有機結晶の伝導機構を明らかにすることを目的にして いる.

  2. 侵入型化合物の合成と物性の研究
    黒鉛の層間にアルカリ金属原子および水素を挿入して3元系化合物を合成し,ま た層状物質であるモンモリロナイトの層間を金属錯体や長鎖アルキルアンモニウ ムで充たした侵入型化合物を合成し,その電子物性を研究している.

  3. 陽電子消滅法によるマイクロポーラス結晶中のナノ物質の電子構造の研究 ゼオライトなど超微小孔を持つ結晶中にアルカリ金属などを挿入しナノ物質を作 り,注入される陽電子の寿命と対消滅スペクトルからその電子構造を明らかにす ることを目的にしている.

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研究論文

  1. Murakami, H., Sano, M. and Liang, C.: Electron momentum distribution in aromatic crystals studied by positron annihilation spectroscopy, Materials Science Forum, 175, 913-916 (1995).
    アントラセンの単結晶を用いて陽電子消滅の温度変化の結晶方位依存性を測定し た.アントラセン結晶のa 軸方向の陽電子消滅スペクトルの半値幅は温度上昇と ともに増大するが,ab 面に垂直方向では温度に殆ど依らなかった.低運動量電子 との対消滅確率が増せば半値幅は減少するわけで,温度上昇とともに分子骨格か ら離れた位置に分布する電子との対消滅が増大したため,半値幅に異方性が現わ れたものと考えられる.

  2. Murakami, H., Sano, M. and Ni, D.: Brominated fullerene crystals, C60Br8 and C60Br24, studied through positron annihilation, Materials Science Forum, 175, 917-920 (1995).
    C60Br8 および C60Br24 結晶での陽電子消滅スペクトルは陽電子消滅が C60 の炭素 骨格を覆っている臭素の電子との対消滅によることを示し,陽電子寿命の短縮も 消滅確率の増大が分子表面で起こっていることを示している.これらの化合物に 電子線を照射すると,脱臭素が起こり,C60 は六方最密構造に結晶化する.

  3. Imaeda, K., Li, Y., Yamashita, Y., Inokuchi, H. and Sano, M.: Temperature dependence of Hall mobility in a single crystal of the organic semiconductor BTQBT, J. Materials Chem., 5, 861-864 (1995).
    ビス(1,2,5-チアジアゾ)−p−キノビス(1,3-ジチオール) (BTQBT) 単結晶の Hall 易 動度は 330 K で 2.4 DV-1s-1 であり,低温にすると増大し,温度 T に関し T-1.6 に比例することがわかった.これは易動度が格子散乱により支配されていることを示している.キャリアの符号は 175-330 K で正であり,電気伝導は主に正孔により行われていることが明らかになった.

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研究発表

  1. 今枝健一,李永舫,山下敬郎,井口洋夫,佐野瑞香:BTQBT の Hall mobility の温 度変化,日本化学会第69春季年会,立命館大学(京都),1995年3月28日.

  2. 大津庸子,村上英興,佐野瑞香:フラーレン化合物の陽電子消滅,日本物理学会第5 0回年会,神奈川大学(横浜),1995年3月29日.

  3. Sano, M., Hashimoto, S. and Murakami, H.: Electron-positron annihilation in complexes of fullerene, C60, 5th China-Japan Joint Symposium on Conduction and Photo-conduction in Organic Solids and Related Phenomena, Hangzhou, China, October 6, 1995.
    フラーレンは電子供与体ヘキサメチレンテトラテルラフルバレン,ビス(エチレン ジチオ)テトラチアフルバレン,フェロセンなどと電荷移動型錯体を形成する.こ れらの錯体での陽電子消滅を測定したところ,その寿命は 0.15-0.22 ns, 0.36-0.42 ns, 1.5 ns 以上の3成分から成ることがわかった.第2成分に対応する強度の大き いことが特徴であり,これは錯体形成にともない生じた微結晶表面での対消滅に よるものと考えられる.

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研究助成金・受賞等

  1. 文部省科学研究費(一般C):陽電子による分子空間の解明と,それに基づく侵入型 化合物の合成と物性の研究(代表者:佐野瑞香)


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理学研究科報告1995目次へ