教授 藤田純之佑


最近の研究活動

新しい金属錯体の合成,構造,および諸性質について研究している.
  1. かたいルイス酸であるCo(III),および同族のRh(III),Ir(III)などの金属イオンに,や わらかいルイス塩基のホスフィン,ホスファイト,あるいはアルシンなどの配位子を 含む錯体について研究している.

  2. 2,2'-ビピリジン,およびその誘導体,類似体のジオキシドは金属に配位すると大きく ねじれた一対のキラル配座の7員キレート環を形成し,その配座は溶液中で反転する. 反転速度は,金属の種類,共存配位子,溶媒の種類などに依存する.これら依存の要 因,および溶存状態における錯体の構造について研究している.

  3. 2,2'-ビイミダゾールは2つのイミノプロトンを持ち,中性,1価,および2価陰イオ ンとして金属にキレート,あるいは架橋配位し,種々の型の錯体を生成する.この配 位子を含む新錯体の合成,プロトン解離などについて研究している.

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研究論文

  1. Tsuchimoto, M., Ito, Y. and Fujita, J.: Synthesis and characterization of trans- [CoCl2(232N4x)]+ (232N4x=1,4,8,11-tetraazacyclopentadecane, cyclohexadecane, -cyclo-heptadecane, -cyclooctadecane, -cyclononadecane, -cycloicosane, -cyclohenicosane, and -cyclotricosane), Bull. Chem. Soc. Jpn., 68, 866-873 (1995).
    金属に配位すると10-15員環キレートを含む新しいテトラアザ環状配位子を合成し, これら配位子,および関連配位子を用いて表題の一連のCo(III)錯体を合成し,4 つのキラルな配位窒素原子による異性体も幾つか分離した.窒素の配位子場強度 は6,7員環で大きく低下するが,それ以上は員環数の偶,奇により多少の変化を示 した.また,電気化学の測定では8-11の中員キレート環はCo(II)に還元しやすく, Co(II)錯体も不安定であることが示された.

  2. Suzuki, T., Kashiwabara, K. and Fujita, J.: Preparation and characterization of mononuclear palladium(II) and dinuclear palladium(I) complexes containing a new phosphine-imine-type didentate ligand, 8(dimethylphosphino)-quinoline (Me2Pqn). Molecular structures of cis-[Pd(Me2Pqn)2](BF4)2 and [Pd2Cl2(Me2Pqn)2], Bull. Chem. Soc. Jpn., 68, 1619-1626 (1995).
    表題の新しいホスフィン配位子,およびそのPd(I,またはII)錯体を多数合成し,性質を検討した.[Pd(Me2Pqn)2](BF4)2のX線構造解析から,錯イオンは配位子間相互作用のため,四面体状に歪んでいること,また,二核錯体の[Pd2Cl2-(Me2Pqn)2]のX線構造解析から,Pd-Pdは2.542(1)Å、キレート配位子は一つのPdに配位し,それぞれは平面型配位で,二つの配位面はほぼ直交していることなどを明らかにした.

  3. Kashiwabara, K., Ozeki, Y., Kita, M., Fujita, J. and Nakajima, K.: Synthesis and crystal structure of bis(1,1,1-tris(dimethylphosphinomethyl)ethane)-iron(II) tetrafluoroborate dihydrate, Bull. Chem. Soc. Jpn., 68, 3453-3457 (1995).
    表題の配位子をもちい空気中で安定なFe(II)錯体を合成した.[FeP6]2+型の単核錯体の最初の例である.X線構造解析の結果,Fe-Pの距離は2.312(5)Å,同じd6電子配置の対応するCo(III)錯体(2.331(9)Å,Cr(0)錯体(2.287(1)Åの中間で,M-P結合の結合性を反映している.多少不安定な二核錯体,[Fe2(μ-Cl)3-(mmtp)2] B(C6H5) 4・2Oも得られた.また,電子スペクトル,電気化学的性質も測定し,Co(III)錯体と比較した.

  4. Kanno, H., Yamamoto, J., Utsuno, S. and Fujita, J.: Isomerization and racemization of the tris(4,4'-dimethoxy- or 4,4'-diethoxy-2,2'-bipyridine)-chromium(III) complexes, Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 665-671 (1996).
    表題の錯体には,4種の配座異性体が可能であるが,低温でのカラムクロマト法 により,それぞれ2種分離し,また,分割した.異性体は水溶液中速やかに互い の間で異性化し,その後ゆっくりとラセミ化する.これらの反応は水素イオン, 配位子の濃度には無関係で,分子内反応で進行するものと思われる.反応速度は, 4,4' 位の置換基の電子供与性が増大すると顕著に減少することが明らかになった.

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研究発表

  1. 阿藤正道,藤田純之佑:非対称なジケトナト配位子を含むコバルト(III)ホスフィン錯 体の立体選択性,第45回錯体化学討論会(福岡),1995年10月14日.

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研究助成金・受賞等

  1. 文部省科学研究費(一般C):陽電子による分子空間の解明と,それに基づく侵入型 化合物の合成と物性の研究(分担,代表者:佐野瑞香)


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理学研究科報告1995目次へ