私は、高校2年生の時にはじめての交換留学を体験しました。以来さまざまな形で日本国外の大学との関わりを持つ事になりましたが、当時は、海外に行くという事が今ほど一般的なものではなく、情報も十分になく、学校の支援体制もとても十分とは言えず、さらに単位互換制度が無い学校だったので、卒業を1年延ばす事となり、当時の私にとって交換留学への参加は、かなりの「決意」を必要としました。
それからわずか数十年の間に、社会が様変わりしました。みんなが、普通に外国に旅行するようになり、メディアを通して海外の事情を、簡単かつタイムリーに知る事ができるようになり、インターネットを使えば、たちどころに、家族、友人と連絡を取り合うこともできます。ICUには、21カ国、63校の協定校があり、さらには、留学先で取った単位を編入することにより、4年間で卒業することも可能です。また、留学制度を利用したICUの卒業生も数多く、さまざまな体験談を聞く事もできます。協定先の大学のウェブサイトを見れば、協定校の教育理念、教育プログラムを事前に調べる事もできます。皆さんには、こうした支援的な環境を大いに生かして頂きたいと思います。その上で、「なぜ、留学するのか?」という皆さんの人生設計とも関わる本質的な問題、それから「留学先で何を学びたいのか?」といういわば学問上の目標の2つについて考えた上で留学プログラムに臨んでいただきたいと思います。皆さんには、かつての、私の「決意」とは質的に異なる「決意」が求められているのです。
なぜ留学するのかという問いに対する、皆さんの答えはなんでしょうか?留学はあくまでも手段であって、留学を通して何を実現しようとしているのかというのがポイントです。私自身がそうであるように、それは、おそらく皆さんの人生でいつまでも生き続けるもので、皆さんの生き方の柱になってくれるはずです。この柱を築いた上で、留学に臨むときっとさまざまな事が見えてくるでしょう。逆に、柱がなければ、何も見えてきません。自分は何を大切にするのかといった自身の発見をしたり、自分自身とは異なる価値観を持つ人に遭遇する事があるでしょう。さらには異なる価値観、文化を持つ人を受け入れる寛容さが試される場面に直面し、柱が揺らぐ事もあるでしょう。しかし、柱が有るからこそ心揺さぶられる事にも出会えるのです。
留学先で何を学ぶのかという事もしっかりと考えておかなくてはなりません。学問は、皆さんが築こうとしている柱を支えてくれる知識と物の見方を提供してくれます。留学先によっては、ICUで開講されていないコースがオファーされている学校もあります。みなさんが築こうとしている柱を支えるためにどのような知識が必要なのか、入念に調べる事が必要です。ICUの多くの教員は、豊富な海外経験を持ちます。分からない事は、臆せず、教員、職員にアドヴァイスを受けてください。また、ICUには、海外からの学生も多数来ています。そういった学生との情報交換も積極的に行ってください。
さまざまな可能性を持ったプログラムですが、皆さんの主体的な取り組みこそが鍵となります。皆さんの留学プログラムが実りある経験となるよう、願ってやみません。