11.      日本におけるCSRの進展 ― 日本経団連の取り組みを中心に

 

(1)「グローバルなCSRに対するCBCCの取り組み」

              長谷川知子  CBCC (海外事業活動関連協議会)事務局次長

 

(2)「CSRに対する日本経団連の取り組み」

              讃井暢子  日本経団連国際第二本部長

 

 

報告要旨(1)  「グローバルなCSRに対するCBCCの取り組み」

(社)海外事業活動関連協議会(Council for Better Corporate Citizenship: CBCC)事務局次長 長谷川知子

 

1.なぜCSRか−CSRへの関心の高まりの背景−

 

2.CBCCのCSRへの取組み

(1)設立の経緯

 

(2)情報提供活動(セミナー・シンポジウム等)

 

(3)CSR対話ミッションの派遣

  @対米CSR対話ミッション(ニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ)

  A対欧州CSR対話ミッション(ベルギー、オランダ、英国)

  B対東南アジアCSR対話ミッション(タイ、インドネシア)

  C対中国CSR対話ミッション(北京、上海、広州)

   日中CSRシンポジウム、CSRフォーラムの開催

 

(4)グローバルネットワークの構築

 BSR, CSR Europe, AccoutAbility, BGTS, CCSR, AIM, GRI その他

 

(5)ステークホルダー対話の実施

 

3.各地域のCSRの特徴

(1)米国におけるCSRの特徴

(2)欧州におけるCSRの特徴

(3)東南アジアにおけるCSRの特徴と課題

(4)中国におけるCSRの特徴と課題

(5)グローバルなCSRへの取組みにおける日系企業の課題

 

4.国際基準・規格への対応

(1)ISO SR規格(日本経団連)

(2)GRIへの対応

 ・GRI(Global Reporting Initiative) G3ガイドライン改訂への対応

 ・CBCC「GRIタスクフォース」の設置

(3)日本企業の課題

 

 

報告要旨(2) 「CSRに対する日本経団連の取り組み」

日本経団連国際第二本部長  讃井暢子

 

1.CSRに対する基本的考え方

Ø         競争力の源泉として経営に直結

Ø         企業の自主性・主体性が最大限に発揮される分野

Ø         多様性

Ø         変化・進化するもの

 

2.日本経団連の取組み

(1)企業倫理・企業行動に関するこれまでの取組み

 

(2)CSRに対する取組み

@組織体制

  2003年12月 企業行動委員会、社会貢献推進委員会の合同部会として

         社会的責任経営部会を設置

  2004年2月  CSRに対する基本的考え方発表

  2004年5月  CSRの観点から企業行動憲章・実行の手引きの改定

  2007年4月  実行の手引きの改定

 

 A企業行動憲章:会員の申し合わせとして

 

 Bその他の活動

Ø         推進ツール発表(2005年10月)

Ø         ウェッブサイトによる情報提供

Ø         ステークホルダーとのコミュニケーション

Ø         ISO SR規格への対応

 

(3)企業の取組み

 CSRに関するアンケート調査結果(2005年3−4月)

 

 

《 全体討論 》

 

野村: グローバル・コンパクト(GC)について、経団連としてのどのように取り組んでいるのか、もしくは取り組もうとしているのか、伺いたい。

讃井: GCは遵守されるべき規準ではあるが、経団連としてGCを推奨するということはしていない。経団連は、特定の基準を推奨するよりも、会員企業に対し選択の可能性を示すことを目指している。基準を選択するのは企業であって、各企業が自らの企業にふさわしい基準を選ぶのがよいのではないか。

長谷川: 実行の手引きにおいて、参照すべきガイドラインとして様々な基準の中身を紹介し、各企業の参考になるようにしている。繰り返しになるが、経団連として特定の基準を推奨することはない。

野村: 経団連がGCをプッシュするかしないかで、参加の度合いが変ってくると思う。経団連の基準としてGCに取り組むことは、将来的にもないのだろうか。

讃井: 私たちの自前の基準として企業行動憲章があるが、これは会員の申し合わせという性格だ。その点において、GCとは性格が異なるといえるだろう。

碓氷: GCは戦略的コミュニケーションとしてとらえられる側面があると思うが、如何か。

長谷川: GCに参加することが、その企業のCSRの向上において一番有効であると判断するなら、参加するのが望ましい。企業は自らが取組むべきCSR上のイシューを自ら選ぶ。各社の経営判断のなかでGCに参加するかどうかを戦略的に判断して欲しい。経団連としては、その選択の参考に資するため各イシューをステークホルダーとの関係も含めてメニューとして提示するよう努めている。

内田: つまり企業の戦略が問題であって、経団連としての戦略はないということか。

長谷川: 経団連としては、各社のCSRを奨励していくことを考えている。

内田: 日本の企業は欧米にひけをとらないとのことだったが、アンケートをみると、日本の企業がCSRの取り組みで一番力をいれているのは未だにコンプライアンスであって人権などは低い。本当にひけをとらないと考えていいのか。

長谷川: 米国企業の多くは、CSRにおいてはbeyond complianceに取組むと考えている。彼らのアピールの仕方として、コンプライアンスはCSRのベースとなる取組みであって、わざわざ宣伝はしない。complianceを超えた社会にポジティブな影響をもたらす取組みであるCSRに取り組むことによって、戦略的に株主に対する企業価値を形成しているという意識もあると思う。

讃井: 定義の問題もあると思う。欧米では、CSRにコンプライアンスを含めず、別物として扱う感覚がある。対して日本では、CSRの土台はコンプライアンスから、というように意識されているのではないか。一般にアジア全体でも、コンプライアンスが重視される傾向がある。

黒田: 欧米と日本を比較すると、グローバルに対する考えが違うように思う。アメリカでは、株主や消費者などCSRをウォッチしている人が大勢いて、CSR調達にしてもやらざるを得なくなっている。対して日本は、NGOなどウォッチしている人が少なく、企業に対する脅威になっていない。日本ではまだまだステークホルダーとの対話も少ない。我々も対話するに値するよう努力しなくてはいけないが、今後、NGOにどのような役割を期待しているのか伺いたい。

長谷川: NGOとの連携は必要だと考えており、CBCCでも会員企業のニーズを探りながらすすめていきたいと考えている。NGOに対する期待とは異なるが、CBCC会員企業のほとんどはグローバルに事業を展開している多国籍企業であって、必ずしも国内ばかりを向いているわけではないことを指摘したい。会員企業は既に、海外のSRI機関の評価対象となっていたり、海外の取引先からCSR調達基準や環境基準の遵守を求められていたりする。グローバルな圧力を受けながら、自社のCSRへの取り組みをグローバルな観点から検討している段階にある企業がほとんどだ。

功刀: 企業が海外で活動する際、現地で槍玉にあがるほとんどは人権問題だ。しかしながら、調査の結果をみると、CSRとして人権に取り組もうという意識は低い。これはどう理解したらよいのか。

讃井: 日本の企業は、人権や雇用の話は人事という枠組みで扱ってきて、CSR活動として取り上げるという発想がまだない、ということなのかもしれない。

長谷川: 実際にCSRとして人権をとりあげるとしても、対象となるサプライチェーンの範囲を定めるのが難しい。中国などでも日系企業はサプライチェーンにおける取組みを推進しているが、どの範囲まで含めるかが課題となっている。ISOにおけるSRガイダンス規格(26000)策定の議論においてもサプライチェーンの定義として企業のsphere of influence の及ぶ範囲とする提案もあるが、実際に自分の子会社の下の下のサプライヤーまでがサプライチェーンに含まれるとなると、対応が難しい点は多くなるだろう。

長谷川(ILO): 日本の企業のCSRは、環境から出発したので人権や労働について弱いのではないか。他方で、日本の企業の最近のCSRに対する意識の向上には、ILO側も驚いている。GCの効果かもしれないが、環境だけでなく、人権や労働に関心がでてきている。質問だが、グローバルな金融機関によるSRIに対する取り組みとして、何か経団連で関わっていることがあれば、教えていただきたい。

長谷川: CBCCでは、世銀の赤道原則や、UNEPFIの責任投資原則など、会員企業に対して紹介している。実際に参加している企業もあるが、これらの検討は各社の判断にまかされている。

功刀: 英国では、2000年に年金基金などの機関投資が社会・環境側面を考慮しているかにつき情報開示を法律で義務付けられ、これがSRIを大きく伸ばしたが、経団連はこのような政策につき政府に働きかけは行わないのか。

長谷川: 確かにイギリスやフランスではCSR情報の開示に関する法整備が進んでいる。しかしながら、CSR報告書の発行数や報告書に第三者意見を取り入れている企業数は日本が一番多く、英国は二番目だ。たとえ法律がなくとも、実際に行われているという側面もあると思う。

功刀 ISO26000への取り組みが現在進行中だが、多様なステークホルダーが参加するなかで日本については、経団連がNGOの代表が参加するのを嫌って、NGOはオブザーバーにとどまっていると聞いたが、本当か。

黒田: その点に関しては、事実関係で補足すると、エキスパートを選出する状況は整い、現在NGO・NPOの中で、調整中である。

讃井: ISO26000の策定プロセスにおいては、経団連も産業界として参加しているアクターに過ぎず、NGOの参加について発言する権利はないのではないか。

道傳: CSRの定着に関してだが、まだまだ日本での浸透度は低いと感じている。国連などの場では、CSRは国連ミレニアム目標と対になって話されるが、日本ではそのようなことはない。日本の企業は、コンプライアンスを超えたパブリックネスをもった活動が将来的にも必要であることを、消費者へのアウトリーチも含めて検討すべきではないか。

讃井: ステークホルダーの価値観に対応して企業は動く。消費者への働きかけまで企業で出来るのかどうか、疑問がある。

長谷川 将来の消費者という観点になるが、大学とのコラボレーションがはじまっている。CSRに関する講座が開設されているので、そのような講座に企業から人を派遣するなどして、現実の問題としてCSRの認識を広めることはできるだろう。

讃井 パブリックネスについてだが、「企業は公器」という言葉に見られるように、そのような意識は日本企業において前からあったといえる。しかしながら、その意識をCSRとしては認識してこなかった。そして今日、外で発生した「CSR」という新しい概念に合うように自らの活動を整理しなおそうとしているといえるのではないか。

佐藤 人間の安全保障についての講座で、企業の平和構築について取り組んでいる。CSRの規範化に関連するが、企業の行動規範としてソフトローがよく使われる状況において、日本は戦略として日本ブランドを積極的に打ち出していくこと必要だと考えている。ルールの背後には価値観があり、ルールによって優越性が確立されるからだ。経団連としてそのような意識はあるのか。

讃井 グローバルなルールをつくる過程への参加は重要だと認識している。ISO26000に関しても、こちらからたたき台を作るなど、積極的に参加している。

長谷川: 国際的なCSRコミュニティは狭い。この中に日本として入っていき、日本のCSRに関する情報発信をするために、CSR関連機関とのネットワーク作りが重要だと考えている。

堀内: 企業による報告のなかで人権に対する取り組みが少ない点については、経団連でグッドプラクティスを示して、明確な内容を示したほうがいいのではないか。取り組みがあるのに、発表まで至らないのはもったいない。また、CSRにおいてみられる産業別の取り組みの進展について、全体を見渡す観点から経団連はどう考えているのか。最後に、行動憲章を周知させるにあたって、経団連としてどのような取り組みをしているのか。

讃井: 人権についてだが、アンケートで日本の企業の優先順位が低いのは、国内の事業活動に注目する限り、意識されにくい面があったということであり、また問題が顕著なところから取り組むので、人権が後回しになるということもあると思う。CSRの中身の変化に合わせて、グッドプラクティスの紹介事例を増やし、推進ツールも充実させていきたい。産業別の取り組みについてだが、業種によってCSRのあり方も違う。他の産業におけるCSRが、すぐに他の産業に応用できるわけではないので吟味が必要だろう。

坂本: 日本の企業による取り組みは進んでおり世界の基準に達しているという印象をうけたが、如何か。

讃井: あらゆる面ですすんでいるかどうか、という判断は難しい。従来の日本の経営には、長期雇用や人間尊重といったすぐれた考えがあったと思う。日本企業が、これらの考えをCSRとは言ってこなかった、という点は指摘できる。

岡田: 日本の従来のマネジメントは素晴らしかったが、その点にとらわれているのではないか。新しいステークホルダーを含む価値観が、まだ日本企業には導入されていないと感じている。例えば持続可能性について、貧困が企業の持続可能性を脅かすという議論も行われているが、日本はまだまだそのような新しい考えに従来の価値観の問題もあって対応できていない。日本企業は新しい価値観を導入しなければ世界の動きに立ち遅れるのではないか、と懸念している。

讃井: 世界的な価値観を会員企業にとどけるのも使命だと考えている。遅いと感じるかもしれないが、日本企業が努力していることは確かで、失望しないでいただきたい。

長谷川: 新しいグローバルな価値観を社会に普及させていくことは、企業だけの問題ではなくNGOや教育とも関わる問題だ。

讃井: また企業人も生活人であり、例えばミレニアム開発目標について従業員からの提案があれば経営者も動くかもしれない。いずれにしても経営者だけの問題ではないだろう。

庄司: CSR推進団体同士のネットワークを利用して、お互いの基準を相互に推奨するということが行われている。経団連としても憲章をGCなどの他のCSRの国際基準と相互に推奨しあう対象にすることは考えられないか。

長谷川: 憲章は経団連会員企業の申し合わせであって、他の国際基準とは性格が違うので、難しいと思われる。

牧: 国際的なCRS機関とのネットワーク作りを今後もぜひすすめていただきたい。というのも、3年に一度、グローバル・コンパクト・リーダーズサミットというものがあり、富士メガネ、ゼロックスなどとともに川崎市も参加している。こういう場に参加しないと、せっかくいいことをやっていても知られないという側面があると思うので、ぜひ参加を検討していただきたい。8月1日には、川崎市で市民を対象に、サミット参加について報告会を行なう予定だ。詳細はまたご紹介したい。

水田: 今日の議論と関係が深いと思うので紹介させていただきたいが、平和構築とビジネス業界を結びつけるべく、東大で研究会を立ち上げている。7月17日にも研究会が行なわれるが、企業の本業における連携を探る試みをとりあげる。例えばある自動車企業がJVCと共に現地で行なった職業訓練があるが、このような取り組みが、その後の本業にどのような影響を与えたのか,等も含めて検討を行なうつもりだ。

野村: 讃井さん、長谷川さん、ありがとうございました。おかげで大変活発な質疑ができ、よいセッションになりました。経団連の影響力は絶大なので、CSRやGCに関しても、今後とも大いにリーダーシップを発揮してほしいと願っています。

(司会: 野村彰男   記録:久保田有香)