「世界社会フォーラムについての2つの報告」

 

(1) 「世界社会フォーラムはどこへ向かうのか − ポルトアレグレからムンバイ、そしてナイロビへ

毛利聡子 明星大学教授

 

(2) 「グローバル・タックスに関する3つの議論と実現の鍵」

   上村雄彦 千葉大学特任助教授

 

 

《毛利聡子・報告要旨》

 

2007120日、ケニアの首都ナイロビで第7回世界社会フォーラム(World Social Forum WSF) が開幕した。2001年にブラジルのポルトアレグレ市で開催されて以来、世界社会フォーラムは年に一度140カ国から数万の民衆を惹きつける巨大な空間(場)となってきた。ブラジルのポルトアレグレで4回、インドのムンバイで1回、昨年はバマコとカラカス、カラチの3都市で分散開催された。五大陸から集まった人々は5日間にわたって、それぞれが直面している現実の問題を共有し、共感し、オルタナティブの可能性を語り合い、次なる戦略を練るために海を越え、山や砂漠を越え、川を渡って参集する。

 開会式が行われたナイロビ市内のウフル公園では、女性の司会者の大きな声が響いた。「ビバ、WSF。ビバ、アフリカ!ビバ、“another world is possible!”」。そして「連帯」のチャントが続く。治安面では悪名高いウフル・パークもこの日はピクニック気分の参加者で埋め尽くされた。7キロ離れたキベラ・スラムから出発したマーチがウフル・パークに到着すると開会式の熱気は頂点に達した。マーチの出発を東アフリカ最大のキベラ・スラムにしたのは、貧困の問題を前面に出そうとする組織委員会の意図であった。共通テーマ「人々の闘い、人々のオルタナティブ」を描いた横断幕の下、今回の世界社会フォーラムが始まった。

 2124日、ナイロビ市内から10キロ離れたカサラニ・スタジアムがフォーラムの会場となった。スタジアムの観客席をゲートごとに板で区切り、2階と3階を白いテントで覆った形で48の小会場が出来上がった。スタジアムの外にも100人は収容できる巨大なテントが8つ設営された。朝830から夜800まで4つの時間帯に区切って1000以上のワークショップ、セミナー、証言が開催された。

 アフリカ初の統一フォーラムということもあって、フォーラム組織委員会は、これまで必ずしも十分に議論されてこなかった「アフリカの問題」に光をあてたいと考えていた。12のトピック―債務問題、HIV/AIDS、女性、共有財の民営化、土地問題、平和と紛争、移民、失業問題、自由貿易協定、労働、居住―が中心的な問題として特定された。

フォーラム最終日までには、水の民営化に反対するアフリカ諸国のNGOネットワークが結成され、労働組合と社会運動が多国籍企業による労働者抑圧に対抗するため連携を強化することで合意するなど、市民社会内のネットワーキングはさらに深まっている。これまでにもWSFは、2003年のイラク反戦キャンペーンや2005年に始まった「貧困をなくす行動へのグローバル・キャンペーン(GCAP)」など、世界レベルの“movements”を生み出してきた。しかし、一方で、今回のWSF参加者は当初の15万人という予想を大きく下回り、58,000人(65000人とも)にとどまった。これまで年々増加していた参加者が初めて減少したのである。ナイロビでのフォーラムは、WSFが近年、内包していたいくつかの問題を顕在化させるとともに、アフリカ社会フォーラム自体の組織運営の弱さも露呈することとなった。今回の報告では、以下の点について問題を提起し議論したい。

     「世界経済フォーラム(ダボス会議)」に対し、WSFの可視度ははるかに弱い。メディア戦略を練り直す必要があるのではないか。

     いつまでもトーク・ショーで終わらせるのではなく、アクション・プランを提示すべきだという批判が強まっている。フォーラムの憲章とどのように整合性をとるのか。仮にアクション・プランを提示するにしても、処方箋を一つには絞ることは可能なのか。

     フォーラムの開催には膨大な費用がかかる。政府からも政党からも、企業からも一線を隔して、NGOと社会運動体だけで今後も運営していくことは可能なのか。

     フォーラムの商業化について、どのように考えるか。

     周縁化されている人々、真に草の根の人々は、フォーラムからも疎外されているのではないか。

     新しい民主主義のモデルを創り出そうとしているフォーラムは、果たして民主的に運営されているのか。

 

<配布資料>

毛利聡子「世界社会フォーラムに集う『マルチチュード』:バマコ〜カラカス〜カラチからの「陳情書」」『接続2006』(ひつじ書房、2006年)。

毛利聡子「ムンバイ発「もうひとつの世界は可能だ」:第4回世界社会フォーラム報告」『接続2004』(ひつじ書房、2004年)。

 

 

《上村雄彦・報告要旨》

 

●はじめに

 本年1月20日から25日にかけて、第7回世界社会フォーラム(WSF)がナイロビで開催された。WSFは世界経済フォーラムに対抗する形で始まり、新自由主義的グローバル化とは異なる「もうひとつの世界」を求めて、世界中からNGO、社会運動、市民運動、労働運動が数万単位で結集し、情報や経験を共有し、活発な議論・討論を行い、ネットワーキングを展開する空間であるとともに、「巨大な社会学習の場」になっている。

 WSFでは環境、開発、平和、人権、AIDS、多国籍企業、債務帳消、国際金融機関改革など、数え切れないほど多様なテーマのセミナー、ワークショップ、デモが行われていたが、本報告ではグローバル・タックスを中心に議論を展開したい。

 

●グローバル・タックスの3つの議論

 グローバル・タックスとは、グローバルなモノや活動にグローバルに課税し、負の影響を抑制しつつ税収を上げ、グローバル公共財の供給やグローバル公共善の実現ために、税収をグローバルに再分配する税のシステムのことである。

 グローバル・タックスの議論は、@課税以前に資金の流れを透明にし漏れを防ぐ、すなわち租税回避地や資本逃避の議論、A通貨取引税、国際炭素税、航空券連帯税など、実際に課税を実施する議論、B税の仕組みを創出・管理・運営するグローバル・ガヴァナンスの議論の3つに整理できる。

 まず、租税回避地・資本逃避の議論は、何十もの先進国の銀行、弁護士、会計事務所、租税回避地がネットワークを作り、途上国政府と手を組んで、途上国の資金を非合法に先進国の銀行に送金して秘匿しているという論点が中核をなしている。そのために途上国から先進国に流出している資金が年間5000億ドル、銀行に秘匿されている総額が11.5兆ドル、課税を逃れているものが年間2550億ドルにも上る。この問題の解決なしに、貧困の解消は困難であるが、2002年に設立されたTax Justice Networkは、一つの解決策として国際租税情報を世界的に公開・交換する条約の締結を提唱している。

 次に、グローバル・タックスには、通貨取引税、多国籍企業課税、租税回避地税、国際炭素税、天然資源税、武器取引税、航空券連帯税などがあるが、とりわけジェームズ・トービンが考案し、後にパウル・シュパーンが再定式化した通貨取引税は重要である。これは、通常の為替取引に対しては低い税率をかける一方、設定した変動幅を越える取引に対しては高率の税をかけ、投機を抑え込みつつ、一定の税収を確保する2段階課税である。

 グローバル・タックスが必要な理由は、@グローバルな活動の負の影響を抑制し(政策手段)、A税収を確保し、Bグローバル・ガヴァナンスを透明化・民主化するためであるが、Aの税収の確保に関して、たとえば通貨取引税では年間1000億ドル、国際炭素税では年間1250億ドルの税収が見込まれている。

 グローバル・タックスを管理・運営するためのグローバル・ガヴァナンスについて、Heikki Patomäkiは、第1段階としていくつかの国(最低30ヶ国、国際金融市場での占有率20%以上)で自主的に通貨取引税機関を設立し、各国理事会と民主的総会を設けて民主的な運営を図ること、その際議決権に人口の大小を加味し、政府代表、国会議員代表、NGO・労働組合代表からなる制度を提唱している。また、税収の一部を国連に提供し、国連改革と民主化を促すことをあわせて構想している。第2段階では、国連経済安全保障理事会の創設、あるいは国連経済社会理事会の改革を行うことで、これらに通貨取引税機関の役割を担わせることを提案し、透明で、アカウンタブルで、民主的なグローバル・ガヴァナンスを模索している。

 

●グローバル・タックスを実現させるための鍵

@各国のNGO・市民運動が自国の議会に働きかけること、Aグローバルなネットワークを作り、グローバルに働きかけること、B賛同する国々とグローバル社会運動のパートナーシップを築き上げること、C国連を巻き込むことが、実現の鍵になる。

 

●グローバル・タックスのためのグローバル・ガヴァナンスの事例: 航空券連帯税とUNITAID (注)

 飛行機に乗れる「豊かな」人たちから、累進的に税金を取り(ビジネスクラスからは10〜40ユーロ、エコノミークラスからは1〜4ユーロ)、税収をエイズ、マラリア、結核という3大感染症の薬を安定的に購入する資金源とする航空券連帯税が2006年7月から実施が始まった。このスキームを議論するための「革新的開発資金メカニズムに関するパリ会議」には93ヶ国が参加し、フランスに加えて14カ国が航空券連帯税を実施することを表明し、40ヶ国が「開発資金のための国際連帯税リーディンググループ」を設立した。

 同時に、連帯税の税収を管理・運営する機関としてUNITAIDが2006年9月に設立された。理事会は資金供給国から5名、アフリカ、アジアから1名ずつ、 市民社会から2名、WHOから1名の合計10名からなり、市民社会の意見が中核で反映する民主的な構成になっている。

 

●航空券連帯税とUNITAIDの可能性と限界

 航空券連帯税とUNITAIDの政治的含意は、それが「反米+旧フランス植民地」連合だということである。これはアメリカとその同盟国の支配に対する挑戦であり、新たなガヴァナンスを切り開く可能性がある一方、それがゆえに大きな困難を伴うという両面性を抱えている。

 また、この税はさまざまな問題を生み出す根本原因であるネオ・リベラリズム、巨大金融資本、国際資本移動を解決するものではない。それにもかかわらず、この税のスキームは、本格的なグローバル・タックスとグローバル・ガヴァナンス構築への第一歩になりうるだろう。

 

●おわりに

グローバル・タックス研究の課題の要諦は、今後アメリカとその同盟国をいかに巻き込んでいけるか、強大な力を持つ金融機関の反対をどう乗り越えるか、そして誰が、何を、どのようにすれば、本格的グローバル・タックスに結びつくかという点にあると思われる。そのために、航空券連帯税とUNITAIDの会議のフォローアップとともに、WSFなどグローバル社会運動の今後のヴィジョンや展開を注視していく必要がある。また、アメリカの同盟国でありながら、航空券連帯税やUNITAID創設に重要な役割を果たしたイギリスの動向からも目が離せない。

 

______________

(注)UNITAIDは、もとIDPF (International Drug Purchase Facility) と名づけられていたが、名前を普及させるためUNITAIDと改称したと考えられ、acronymではない。

 

 

《全体討論》

 

高橋 議論に入る前に一点だけ、確認させていただきたい。ポルトアレグレのプロセスの性格は、どのように位置づけられるのか。ギデンスのグローバル・サード・ウェイ的なものなのか、あ

るいは社会運動として考えるべきなのか、それともガス抜き的なものなのか。

毛利 ムーブメンツといっているので、多くの運動の中のひとつとして位置づけられていると思う。世界社会フォーラムは、組織をつくらないネットワーク型であるが、国際評議会が年に数回集まり、原則憲章に沿った運営方法論を考えている。フォーラムをすすめるというプロセスのなかで、色々なことが段々と出来ているという状態だと思う。評議会では、ブラジルとフランスのNGO,労働組合のリーダーが指導力を発揮している。ガス抜きなのかという話があったが、抵抗勢力の形態は、そのときの権力形態を映し出すと指摘される。現在のフォーラムは、どこにリーダーがいるのかわからないという現在の支配形態を示しているのではないか。ガス抜きというよりも、写し絵ではないか。最近のダボス会議の情報開示が増えてきたのも、世界社会フォーラムの対抗フォーラムとしての影響ではないか。ダボス会議をも可視化しているのはフォーラムだ。

久山 ダボス会議も世界社会フォーラムも変質する傾向をみせており、将来は両者の方向性が収斂するような局面も考えられるのではないか。

毛利 実際に橋渡しを試みる者(ブラジル大統領や、U2のボノ、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツなど)はいるが、彼らに対する批判は大きい。収斂することは難しいのではないか。

高橋 まずフロアからご質問を頂き、その後にまとめてお答えいただくようにしたい。

功刀 UNITAIDの将来性は、社会フォーラムよりも大きいと思う。時代の流れにレレバント(適切かつ有意義)かという点からいえば、社会フォーラムは社会運動であるが市民組織の連合体またはネットワークとは異なりエクスパティーズも組織力もリーダーシップもない。したがって将来の見通しは暗いと思っている。フォーラムに集まった人数が15万人ぐらいということだが、それで大きなインパクトを与えることは現代においては考えられない。現代のネットワーク社会では、実際に人々が集まる必要はないので、その点で多少時代からずれ始めている気がする。これに対して、第二報告における税の議論は世界政治の流れの中で新しい運動に発展する可能性があると考えている。ダボスとポルトアレグレを結ぶ試みは、2005年の「プラス5」を前にフィンランドとタンザニアのイニシャティブで行われたが、結局、うまくいかなかった。なぜなら両方ともレレバンスを失いつつあるからではないか。

長谷川 航空券連帯税のように航空を対象にするのではなく、例えば映画や娯楽など皆が納得するところを対象に課税をはじめたほうが、広く受け入れられるのではないか。

後藤 グローバル・タックスを議論する必要性は認めるが、フランスの航空券連帯税は、自らが植民地化したアフリカの崩壊のつけを世界に回そうということで賛成する必要性は全くないと思っている。共産主義は究極の民主制だが、それは結局独裁になった。NGOによる民主制も同じだ。多様なアクターによる合意形成は容易でないため、結局事務局が作った案がそのまま通るような形で「独裁」が行われている。そもそも、国際的な民主主義や民主的制度など、人間の歴史のなかで一度も機能したことがないのではないか。

碓氷 グローバル・タックスについて賛同する国から始めたというのは、いいことだと思っている。毛利先生の発表に関してだが、限定的ではあるがアンチ・ダボスとして社会フォーラムは非常に意味があったのではないか。ただ今後はフォーラムの組織化が必要になってくると思う。

小林 アメリカはタックスに対する拒否感が強いが、インド津波の救済支援などチャリティや寄付には積極的だ。このようなアメリカを視野にいれた方策をとらない現在の税を中心としたヨーロッパ式には限界があるような気がする。タックスとは別のスキームを考える工夫はどこまで進んでいるのか。またUNAIDSにおけるヨーロッパ系製薬会社の利害関係が問題になったように、UNITAIDにおいて同様の問題が生まれる可能性もあるのではないか。

中丸 今日のお話は、最も皆が知るべきことだと思う。現在、世界の格差は広がっており、課題の解決について日本は理想主義を追求すべきで、今ある問題を解決するために努力し、理想を追いつづけることが最も大切なことなのではないか。

高橋 多くの質問がだされたので、発表者のお二人にお答えいただきたい。

上村 たくさんのコメントと質問をいただき、有り難く思う。まず、より多くの人々が納得する課税源についてだが、映画や娯楽に課税するというのは、なかなか納得は得られないだろうし、現実にはむずかしいのではないか。それよりも、途上国に税金を納めない多国籍企業や租税回避地に課税する方が当事者以外の人々は大いに納得すると思う。また、後藤さんの言われるとおり、航空券連帯税について、フランスがアフリカを植民地にして苦しめたそのつけを日本が払う必要はないというご意見はそのとおりだと思うが、地球市民という立場から日本のような大国は航空券連帯税にも、UNITAIDにも参加すべきだと思う。それから、税についてアメリカが嫌悪感を持っているというのはそのとおりだ。確かに税ではない手段も考える必要はあると思う。たとえば、イギリスが提案しているIFF (International financial facility) といった手法もあるが、現実にはあくまでも小手先の対策という面は否めない。税以外にグローバリゼーションを公正なものにする手法があるのかどうか、今後更なる研究を重ねる必要がある。そして、製薬会社の利害関係についてだが、UNITAIDのお金が製薬会社の利益につながる可能性については、現在関連NGOが相当目を光らせて監視している。ただ、これには知的所有権の問題も絡んでおり、WTOがらみの複雑な議論になっているのが現状だ。UNITAIDの運営が民主主義たりうるかという点については、設立から間もないのでまだ何ともいえないが、これまでの弊害から学んで理事会と事務局を小さくし、NGOにも最初から中核部分で関与させるなど、種々の工夫は見られる。引き続きしっかりとフォローをしていきたい。本日発表させていただいたグローバル・タックスは理想主義的だし、すべてを解決する万能薬でもない。しかし、さまざまなグローバルな問題を解決しうる有力な処方箋だ。中丸さんがおっしゃったとおり、理想主義的だからこそ追求し続ける価値があると思う。ただ、がむしゃらに追求するのではなく、皆さんのお知恵と協力を得ながら、戦略的に、賢く研究を続け、提言活動をやっていきたい。

後藤 1月にナイロビのスラムを訪れて、その悲惨さに愕然とした。援助が不要とは思っていないが、お金を注ぎ込めばスラムが何とかなるのか。それについてどう考えるのか。

功刀 発表で税収の一部を国連に提供し国連改革をうながすということが主張されたが、国連改革はお金の問題ではない。国連外交官の頭の入れ替えと各国政府の政策を変えなくてはいけない。

   途上国にも色々ある。途上国もグローバルな問題に対し貢献できる局面も多々あると思う。その視点からの議論があってもよい。

毛利 社会フォーラムの先は暗くない。その場にいくと、このフォーラムには世界を変える力があるという雰囲気を感じる。世界社会フォーラムは、リピーターも多い。引きつけるものがあるのだろう。プロセスが大事というモーリス・ストロングの発言があるが、このフォーラムもプロセスとしてとらえるべきだ。スラムの話に関連するが、債務についても帳消しすればいいのか、という話がある。債務帳消しに取り組んでいるジュビリーサウスやEURODADは、今までの債務が何に使われてきたのか情報公開を求めているが、政府は拒否している。債権国やIMFは、情報公開を求めて圧力をかけるべきだし、資金が出て行ってしまわないように透明性の確保が重要だと思う。

上村 スラムにお金が入れば問題は解決するのかというご質問について、明らかにそれだけではスラムや貧困の問題は解決しないと思う。グローバル、ナショナル、ローカル、コミュニティなどあらゆるレベルで包括的に問題に取り組まなくてはならない。たとえば、国際レベルでは資本逃避など「漏れを防ぐ」対策を打つことなしに問題は解決しないだろう。また国際的に民主的な制度は機能してないという指摘があったが、少なくともリージョナルレベルではEUの試みは注目に値する。国家レベルに目を転じてみると、ルワンダやナイジェリアでは大統領のリーダーシップで、汚職が相当程度改善されたという事例もある。ローカルレベルでは、草の根から無数の内発的発展の動きが胎動している。各レベルにおいて求められているのは、キャパシティ・ビルディングやインスティテューショナル・ビルディングだ。国連改革についても、国連内部の改革だけを考えるのではなく、世界の市民社会の声を反映させるために、第二国連や世界議会を作ろうという動きも捉える必要がある。これらを含めた総合的な国連改革を考えなくてはいけない。このあたりも今後さらなる研究を積み重ねていかなければならない分野だ。

高橋 世界社会フォーラムで意識を持った人間がそれだけ集まったということは、地球を変えることにつながると思う。実際、社会フォーラムは、ダボス会議のアジェンダを変えている。いくつかの分野では、果実が生まれている。プロセスを重視した社会フォーラムには意味があると強く感じた。

(司会: 高橋一生   記録: 久保田有香)