環境条約プロセスへの非国家アクターの参加

地球環境戦略研究機関 主任研究員  小林正典

                                                                                                               

報告要旨

 

1.      多国間環境条約と市民参加

 

NGO参加の増加、「敵対」から「連携(パートナーシップ)」へ

 

2.      「参加」とその様々な形態

 

利害関係者(Stakeholders)の参加(Participation)の効果的運営の必要性 (アーンシュタインは「市民参加の梯子」)

 

3.      多国間環境条約に規定される「参加」

 

締約国としての参加、NGOの締約国会議へのオブザーバー参加、条約制度への参加、条約実施過程への参加

 

4.      非政府団体の国際環境条約の国際的政策決定過程への参加

(1)       NGO登録とUNFCCCの事例 増加・多様化

 

(2)       国際捕鯨委員会とNGOの関わり

限定的NGOとの連携 (3カ国以上の登録用件、1名出席、登録の有料化、発言権なし)

 

(3)       地球環境基金(GEF)にけるNGOの関わり

 

小規模無償プログラム(Small Grant Programme, SGP)をはじめとするNGOとの信頼関係に基づく事業活動、NGO非公式協議

 

5.      国際的意思決定へのNGO参加のモデル

 

(i)                 効率的意思決定制度の確立 30名程度の中小の規模の組織。

 

(ii)               重層的NGO構成、地域別NGO代表制度 

 

(iii)             民間企業の代表者による直接参加

 

(iv)             UNEOWEO創設の議論への反映

 

 

《全体討論》

 

総論的な議論としては、環境条約の重要性が頓に指摘され、その実施については、NGOや民間企業がより重要な役割を果たしてきているにも関わらず、国際環境条約に関連する政策・意思決定にNGO参加が特に人権分野などとの比較において、一層の制度的改善が望まれるのではないかとの問題意識に興味が示され、具体的な条約の意思決定機関への参加形態などの現状分析などの点について質疑応答が展開された。特に国連が主導するグローバル・コンパクトでは、民間企業が参加主体として関わってきており、また、東アジアの経済統合やCSR(企業の社会的責任)論議などを考慮すれば、現在産業界が業界団体としてではなく、個々の企業として参加する方途も検討に値するのではとの論旨に多々議論が展開されたが、おおむね好意的理解が示された。

 

その一方で、実際にはNGOを中心とした国際条約プロセスへの参加については、意思決定、実施、モニタリングといったような様々な領域での参加がありうる他、参加の概念それ自体、いわゆる「参加の梯子」の図に示されるように様々なレベルがあり、それらを考慮した上で国際環境条約へのNGOの参加問題を検証することは容易でなく、この点について参加の理論と実践の乖離や関連付けの難しさなどが議論のなかで度々言及された。この点、参加の最大化を一方的に求めるのではなく、管理された参加の充実が至近の課題であるとの論旨に理解が示された。

 

しかしながら、マルチステークホルダー方式と呼ばれる多数の利害関係者を交えた政策論議・意思決定が長期に継続され実効性の高い取り組み実施を進めていく上で重要であるという認識は広く共有され、環境分野についても、NGOを含めた非政府団体の特に意思決定分野における効果的参加がより前向きに検討されるべきとの意見が複数表明された。

 

その他、各論に関連して、主な論点は以下の通り。

 

非政府間アクター、特にNGOの条約プロセスへの参加について、各環境条約別に条約上の規定を中心に相互比較を目的として図表が作成されているが、これについては条約上の規定だけに限定せず、締約国会議の決定や条約から派生している国際協力プログラムなど、対象領域を広げて図表の充実を図ってはどうかとの指摘があった。この点については、提案を受け、図表を補充する旨報告者から回答があった。

 

条約実施状況の監視・評価へのNGOの参加について、既にOECDでは特定国の政策パフォーマンスの評価をNGOや専門家を交えて実施する一方、例えば気候変動枠組み条約に関しても類似の取り組みがあるとの発言があった。この点に関しては、報告では特に、途上国における政策パフォーマンスの評価の体制がOECDAnnex I諸国と呼ばれる先進国のものと比較して不十分であるという点の指摘を意図した旨回答。また、先進国間の政策パフォーマンス評価についても、NGOの代表が政府間会合で適切な参加の機会が与えられているかという問題も提起していると補足があった。

 

現行の国際機関の体制を鑑みれば、政府が政策決定権限をNGOに委譲するということは考えにくいのではないかという指摘については、ILOISOなど非政府団体が政府と対等あるいは区別なく国際的な意思決定に参画し、肯定的に評価されている事例もあり、現在進められている国際環境ガバナンスの改革問題や世界環境機構・国連環境機関へのUNEP等の再編問題などの議論でNGOの参加の制度化の問題を議論しうるのではないかとの趣旨である旨回答された。

 

市民参加と環境情報へのアクセスの問題が綿密に関連しあっていることを考えれば、ヨーロッパのオーフス条約の下での環境情報へのアクセス改善にむけた取り組みは、後の論稿で言及すべきではとの指摘があった。この点については、参加の問題に特化して執筆を進めた関係で情報アクセスの記述を含めなかったが、指摘のあった関連性の観点から適切と思われる箇所にオーフス条約関連の記述を挿入する旨回答があった。

(司会:碓氷尊 記録:小林正典)