NGOからみたWTO交渉

佐久間智子




■報告要旨

    ・ NGOは実に多様であり、活動の方向性にもかなりの差異がある。自由化による便益を追い求める姿勢は、先進国政府だけでなく、途上国政府にも、さらには主要な国際NGOのなかにもみられる。
    ・ 途上国政府とNGOとの連携においては、途上国政府がみずからの貿易政策に都合の良い活動方針を掲げる国際NGOを取り込むようなケースが少なくない。そうした国際NGOの支援のもと、国内的には、むしろ格差の拡大が懸念されている。
    ・ WTO交渉上の問題点としては、非民主的で不透明な運営、際限のない交渉領域の拡大等があげられ、資金や人材に制約のある途上国は、交渉のテーブルにさえつけない状況である。
    ・ 本来、私たちが取り組むべき課題は、「企業」に新しいビジネス機会を創出するための自由化ではなく、「人々/人間」のための自由化である。
    ・ 「地産地消」運動などは、価格だけではなく、雇用や安全なども包括的に勘案した「生活者」としての視点から、みずからのライフ・スタイルを問い直すものである。これは、自由貿易が語られる際に登場する「消費者」という概念を越えた視座である。

    * 配付資料
    「WTOカンクン閣僚会議とドーハ開発ラウンド」


■全体討論

    ・ アクター間の非対称性のなかで、国際公共政策はどのようにとらえられるべきであろうか。特に、市民社会組織は、「公共領域」問題との関係において、何を軸に、いかに結集することが可能であろうか。
    ・ 生物多様性等を考える際、WTOが主導する議論から一度離れ、経済的価値とは異なった次元から見直し作業を進めることも重要であろう(特に地域社会における人々の生活との関係において)。
    ・ 特に9.11以後、グローバル社会において、何をいかに交渉していくのかという「ゲーム」の構図が不明瞭になっている。世界的な貿易分野のシンクタンクによる高度な研究が期待される。また、具体的な課題を見出す段階から、広範なステークホルダーが自由に討論できる場の設定も不可欠であろう。こうした作業は、新しいマルチラテラリズムの模索にもつながりうる。

司会: 高橋一生(ICU/UNU)記録: 谷村光浩(UNU)


Back to top