富士ゼロックスが目指す経営とグローバル・コンパクト

有馬利男




■報告要旨

    ・ 富士ゼロックス社では、時流や組織マネジメント上の課題などに対応するため、経営指針を幾度か刷新してきたが、相互信頼や新たな価値の創造等の核心部分は、ゼロックス社の創業者が提示した企業理念(Our business goal is to achieve better understanding among men through better communications.)から一貫して引き継いでいる。
    ・ 富士ゼロックス社が社会に対する企業の責任として掲げてきた3つの側面(経済、社会、そして環境)は、グローバル・コンパクトの9原則ともうまくかみ合い、7カ月程度の準備作業を経て署名した。これには、グローバル企業として、当然な自己規範という思いもある。
    ・ 富士ゼロックス社では、社会の代表的なアクターからのさまざまな要請(グローバル・コンパクトを含む)をもとに、みずからの活動を再検討し、さらなるレベルアップへ結びつけようとしている。最近、とりわけ企業としての総合的なクオリティをより一層向上させるため、「企業品質」というキーワードも創出した。
    ・ 今後、グローバル・コンパクトへの参加によって、地球規模の情報共有が進み、新たな刺激を得られることも期待している。
    ・ なお、顧客満足度調査、地球環境に関わる各種表彰制度等は、企業活動を展開する上で、ひとつの動機づけとなる。国連においても、フェアで権威のある顕賞/認証制度づくりを検討してはどうか。

    * 配付資料
    「富士ゼロックス株式会社 社会・環境報告書 2003」
    「社会と社員、社会と企業のかけ橋」ほか
    * 関連ウェブ・サイト
    http://www.fujixerox.co.jp/eco/
    http://www.fujixerox.co.jp/company/social/




■全体討論

    ・ 日本でグローバル・コンパクトへの参加が低調な理由は、ひとつには政府の姿勢による。たとえば、フランスでは、大統領がみずからリーダーシップを発揮し、この取り組みを奨励している。そのほかにも、政府主導で本事業への参画を戦略的に進めている国に、中国があげられる。
    ・ 日本では、国内で経済界が取りまとめた「企業の行動憲章」にさえ署名をためらう企業が多い。グローバル・コンパクトは何ら法的拘束力がなく、「自発的なイニシアティブ」であると説明しても、理解を得るのがむずかしいのが実情。ただし、すでに参加している企業は、「9原則」を、サインした/しないの問題ではなく、概して当然のルールとみているのではないか。
    ・ グローバル・コンパクトは、企業と国連を結びつける確かに画期的な取り組みであるが、さらに市民社会組織などが諸事業を客観的にモニタリングできるような仕組みが不可欠であろう。ナイキのように、企業内NGOの進めるキャンペーンや自己評価等については、疑念も膨らんでいる。
    ・ 今後、グローバル・コンパクトの対象は、世界に絶大な影響力を有する大企業のみならず、開発において重要な役割を担う途上国の中小企業へも、本格的に拡大されるべきであろう。なお、途上国にて提携先を求める大企業側からは、このグローバル・コンパクトへの地元企業の参加状況が、ひとつの選定基準となりえよう。
    ・ 日本としては、グローバル・コンパクトを推進するうえで、「愛知万博」とリンクさせた取り組みが考えられるが、まだ具体的な構想はまとまっていない。

司会: 功刀達朗(ICU) 記録: 谷村光浩(UNU)