日本におけるグローバル・コンパクトの展開

野村彰男




■報告要旨

    ・ グローバル・コンパクトは、1999年1月にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムにて、アナン国連事務総長が提唱したもの。世界の経営トップに、「人間の顔をしたグローバリゼーション」への取り組みを促す。
    ・ 2000年7月、「人権」、「労働基準」、「環境」の3分野で、世界的に確立された9原則に賛同する企業と国連(事務局と5つの関連機関)がコンパクトを結ぶ、画期的な取り組みが本格的に開始された(関連ウェブ・サイト参照)。
    ・ グローバル・コンパクトの具体的な活動は、(1)現在直面する課題の解決にむけた政策対話、(2)実践体験の共有をはかるラーニング・フォーラム、(3)国、地域レベルでのローカル・ネットワークづくり、(4)国連ミレニアム開発目標に関わるパートナーシップ事業である。
    ・ 参加企業数は、2003年9月現在、1,235社である。しかし、日本からの参加はわずか9社に留まり、その低調さは、今年の「年次報告書」でも名指しで指摘された。今後、日本においても参加企業数が大幅に伸びることを期待したい。

    * 配付資料
      「国連グローバル・コンパクト: 世界経済における企業のリーダーシップ」
    * 関連ウェブ・サイト
      http://www.unic.or.jp/globalcomp/index.htm




■全体討論

    ・ 日本でグローバル・コンパクトへの参加が低調な理由は、ひとつには政府の姿勢による。たとえば、フランスでは、大統領がみずからリーダーシップを発揮し、この取り組みを奨励している。そのほかにも、政府主導で本事業への参画を戦略的に進めている国に、中国があげられる。
    ・ 日本では、国内で経済界が取りまとめた「企業の行動憲章」にさえ署名をためらう企業が多い。グローバル・コンパクトは何ら法的拘束力がなく、「自発的なイニシアティブ」であると説明しても、理解を得るのがむずかしいのが実情。ただし、すでに参加している企業は、「9原則」を、サインした/しないの問題ではなく、概して当然のルールとみているのではないか。
    ・ グローバル・コンパクトは、企業と国連を結びつける確かに画期的な取り組みであるが、さらに市民社会組織などが諸事業を客観的にモニタリングできるような仕組みが不可欠であろう。ナイキのように、企業内NGOの進めるキャンペーンや自己評価等については、疑念も膨らんでいる。
    ・ 今後、グローバル・コンパクトの対象は、世界に絶大な影響力を有する大企業のみならず、開発において重要な役割を担う途上国の中小企業へも、本格的に拡大されるべきであろう。なお、途上国にて提携先を求める大企業側からは、このグローバル・コンパクトへの地元企業の参加状況が、ひとつの選定基準となりえよう。
    ・ 日本としては、グローバル・コンパクトを推進するうえで、「愛知万博」とリンクさせた取り組みが考えられるが、まだ具体的な構想はまとまっていない。

司会: 功刀達朗(ICU)記録: 谷村光浩(UNU)