2003年9月1日




国連システムを中心とするパートナーシップと地球市民社会

プロジェクトリーダー 功刀達朗




1.研究の目的

過去十余年にわたり、世界を不安定かつ不幸にしてきたグローバリズムの実態が明らかになるにつれ、グローバル化の利益をむしろ積極的に追求し、その恩恵が公平に共有されることを目指す政策的対応が広く求められるようになった。

また、グローバル化の挑戦に対抗し、平和と持続的人間開発を地球的規模で推進していくためには、政府、NGO、企業、自治体、マスメディア、協同組合等の主要アクターの社会的責任と相互のシナジー(相乗効果を持つ協働的パートナーシップ)がますます重要となっている。

ここで注目されるのは、近年来主要アクター間のパートナーシップ構築への多くの努力が国際機構を中心に進展してきたことである。進化論的にみると、国際機構は主として国家の利益追求のために生まれ、第1に国家間の政策協議や交渉の「場」として、第2には加盟国間の協力の「枠組」として発展してきたが、過去10年程をふりかえると、第3に国家の手に余る地球的問題群に対処するため、国連システムには地球社会の公益と共通善を推進する「アクター」としての機能が漸増的に付加されるに至っている。主権国家である加盟国の分権的自立性に左右され、国連システムが主体的にこの機能を果たすことはしばしば困難であることは否めないが、第3段階への移行は、パートナーシップ構築への努力と同時並行的に進行して来ていることは興味深い。

したがって、本プロジェクトの目的は、第1にグローバル化の進展と国家の脱力化と共に重要となった主要アクターの社会的責任と相互シナジーを、理論と実践の両面から政策思考的に研究することであり、第2に社会的責任と相互シナジーを推進するために今後国連システムが果たす役割につき、政策的対応の選択肢を知るための基礎を築くことである。

2.研究方法

本年6月はじめから国際協力研究会(International Cooperation Research Association-ICRA)が準備してきた本プロジェクトは、この秋から文部科学省の助成を得てICUが発足するCOE(Center of Excellence)の「平和・安全・共生」研究教育プロジェクトの一部に合流し、以下のアウトラインに沿ってICUと国際協力研究会の共同研究として進めることとなった。

本プロジェクトは前半2年(2003年8月−2005年8月)と後半約2年半(2005年8月−2008年3月)に分け発展的に遂行する。本プロジェクトはICUの功刀達朗をリーダー、高橋一生をサブ・リーダーとし、プロジェクト前半遂行のために、約10名で構成する企画・運営委員会を設置する。プロジェクト後半の遂行のため、2年後に委員会は再構成を検討する。

前半においては、企画・運営委員会の作成するスケジュールにしたがい、研究参加者は国連大学高等研究所において定期的に研究会を開き(月1回2時間半の報告と討議)、研究成果を報告書(日本語と英文サマリー)にまとめ、その出版後にシンポジウムを開催する。関連するテーマにつき3、4名が報告し、最終報告書の一章を分担するためには、グループ報告の前後に別個のサブグループで会合・協議することが望ましい。研究参加者は各自の研究報告を準備する過程において、国内外の研究機関、国際機構、国際NGO等と連携し、プロジェクト後半における共同研究活動の準備を進める。

後半においては、前半の研究成果をふまえ、主として海外の研究機関、国連システム、国際NGOの研究者及び実践者との共同研究を行い、その成果を国際シンポジウムにおいて発表する。シンポジウムの内容は、国内外から企画・運営委員会の求めに応じ提出された研究報告(ドラフト)から選ばれたものを討議のベースとし、シンポジウムの成果として報告書(英文、日本語サマリー)を出版する。プロジェクト後半は国際協力研究会との継続的共同研究に加え、国連大学(UNU)及びAcademic Council on the UN System(ACUNS)の協力を求める。これによりUNUとACUNSの持つ世界的学術研究ネットワークとの永続的連携を樹立する。

3.参加者
(1) 企画・運営委員会メンバー(2003年−2005年)

  • 功刀達朗(コーディネータ−) ICU(国際協力研究会代表、国連大学高等研究所客員教授)
  • 高橋一生(副コーディネーター) ICU(国際開発センター理事、国連大学客員教授)
  • 山本 和 ICU(政策研究大学院大学客員教授)
  • 広中和歌子 参議院議員(地球憲章推進委員会事務局長)
  • 内田孟男 中央大学(国連大学客員教授)
  • 碓氷 尊 国連大学高等研究所客員教授
  • 吉田康彦 大阪経済法科大学
  • 堀内光子 ILO東京事務所
  • 野村彰男 国連広報センター
  • 毛利聡子 明星大学
  • 谷村光浩 国連大学

(2) 研究報告のテーマと報告者(2003年−2005年)
   2003年9月1日現在。各テーマは必要に応じ今後更に検討を加え、より適切なものとする。
   報告者リスト、左端はチームリーダー。(*)To be confirmed

  1. 国際機構を中心とする協働とネットワークの進展 − 社会と世界を変えるリーダーシップ
    功刀達朗(ICU) 内田孟男(中央大) 碓氷 尊(国連大高等研究所) 高橋一生(ICU) 毛利聡子(明星大) 上村雄彦(ネットワーク地球村)
  2. グローバル・コンパクトによるパートナーシップの構築
    内田孟男(中央大) 山本 和(ICU) *有馬利男(富士ゼロックス) 中丸 進(リコーグループ) 石田 寛(Caux Round Table)
  3. 紛争予防、平和構築における市民社会と国連システムの役割
    高橋一生(ICU) 吉田康彦(大阪経済法科大) 山田 満(埼玉大) 村上裕公(ICU院生)
  4. 紛争、小型武器取引、人道問題における国連とマスメディア
    吉田康彦(大阪経済法科大) 野村彰男(国連広報センター) 百瀬和元(朝日新聞) 石塚雅彦(フォーリンプレスセンター) 道傳愛子(NHK)
  5. 持続的開発と環境問題における国際機構、企業、WBCS、CSOの対応
    碓氷 尊(国連大高等研究所) 松下和夫(京都大) 毛利勝彦(横浜市立大) 蟹江憲史(東京工大)
  6. 国際機構の社会開発、福祉、保健、協同組合に関する公共政策と市民社会
    堀内光子(ILO) 渡辺英美(UNDP/ICU)*勝間 靖(ユニセフ) 栗本 昭(生協連合会)
  7. WTOと市民社会・企業・途上国問題
    市川博也(上智大)*毛利勝彦(横浜市立大) 毛利聡子(明星大) 佐久間智子(「環境・持続社会」研究センター)
  8. 人口、ジェンダー、資源、技術のリンケージに関する国際公共政策とパートナーシップ
    安藤博文(日大) 池上清子(UNFPA) 功刀達朗(ICU)大石奈々(ICU)
  9. ローカルからグローバルの地平へ − 自治体・CBOの国際化と国際機構 − コミュニティから公共圏へ
    毛受敏浩(国際交流センター) 谷村光浩(国連大) 吉田 均(環日本海経済研究所)  Claudia ten Have(ICU院生)
  10. 地球憲章と意識革命 − 公正、寛容、共生 − 文化交流・知的交流、開発教育、倫理教育と行動規範
    広中和歌子(参議院) 内田孟男(中央大) 竹内謙(日本インターネット新聞) 竹内恒夫(国立環境研究所)
  11. アクター間の協働および国際機構のコーディネーターとしての機能の評価
    功刀達朗(ICU) 久山純弘(国連合同監査団) 大西健丞(ピースウィンズ)
    *長 由紀枝(ARR) 野口萩乃(JICA) 吉野賢哉(JICA)

4.研究活動のプラン

  • 月例研究会においては、上記3.(2)の研究テーマにつき原則として1,2名が報告する。必要に応じ外部から専門家を招き意見を聴取する。各報告者は研究会における討議をふまえ、出版に適する論文の初稿を報告の2、3ヶ月後に提出し、企画・運営委員会の審査にゆだねる。
  • 企画・運営委員会は2、3ヶ月おきに会合し、プロジェクトの進捗状況を検討し、初稿を審査し編集作業を分担する。また、必要に応じad hoc委員を任命する。
  • 出版はICUのCOEプロジェクトのシリーズの一冊とするように、フォーマットその他のスタンダードには初稿の段階から留意する。12―15章、総計300―350ページ(巻末の英文サマリーを含む)。一般向きのフォーマットに報告書の大半を書きかえ、政策提言を巻末に加え商業出版のチャネルでその価値を世に問うか否かは2005年8月までに決定する。
  • 2004年3月と2005年3月に公開シンポジウム開催する。
  • プロジェクト前半のしかるべき評価に基づきプロジェクト後半を推進する。第1に国連大学、Academic Council on the UN Systemその他の研究機関との共同研究につき先方と協議し、その内容と活動プランにつき早期に合意成立をはかる。前半で取り上げたテーマのうち5つ程を選び、各研究パートナーから複数の論文を提出してもらい、これを討議のベースとして、2006年と2007年に2日間の国際ワークショップと1日の国際シンポジウムを国連大学にて開催する。
  • 共同研究の成果は英文にて2008年2月までに出版する。この英文報告書をもとに、そのハイライトと抄訳を大学と高校の教材または参考文書としても適当な出版物に作り直すか否かについては、共同研究機関が協議して決定する。共同研究機関には一切コストのかからない商業ベースでの出版に合意した場合には、出版社と企画・運営委員会の責任においてそのような教材・参考書のバランスと質をチェックすることとする。